走りが最重要課題であると言わんばかりの操縦性
一方で走りだが、これはかなりインパクトがあった。リアルタイムで試乗した経験と記憶を呼び起こせば、明らかにスポーティな仕立てであった記憶がある。とくにステアリングのレスポンスはクイックで、グリップが太く小径のステアリングホイールを切ると、即刻クルマが向きを変えた。同時にランフラットタイヤを履き始めた頃のクルマでもあり、コンパクトなBMWというよりもスポーツカーさながらに、路面にアンジュレーションがあればそれがストレートに伝わる、どちらかというとタイト気味の締め上げられた足……そんなマナーだったことが記憶に残っている。
タイトといえば、室内空間も決して広々としたものにはなっていない。1シリーズはフォルクスワーゲン「ゴルフ」などをライバルとするクルマであり、パッケージングはもっと追求してあっても不思議ではなかったが、FR(後輪駆動)であり、フロアトンネルも大きめだったことから、後席に居住空間はゆったりというわけにはいかなかった。BMWである以上、実用性よりも走りが最重要課題である……言われなくてもそう感じさせられる居住性だった。
◎BMW LIFE (af imp LIFEシリーズ) (CARTOP MOOK)
エンジンスタートボタンやUSBなども新時代を感じさせた
またその一方で、新時代のBMWらしさはこの初代1シリーズでも感じさせられたところ。エンジンの始動に関してボタン式が採用されたのはそのひとつだ。実際にはキーフォブをボタン下のスロットに差し込み(この状態で車両のデータがやりとりされ、そのデータがディーラー入庫時に活用されたほか、各種設定がプログラム可能な機能ももっていた)、ボタンを押すことでエンジンが始動した。
新時代といえば、インナーミラー(室内ミラー)で、厚みのあるハウジングの横からカードを差し込む方式のETC一体型が用意されたのもこの時代のBMWから。それとセンターコンソールに3.5mmステレオミニプラグのジャックが用意された。じつはUSBジャックが最初に用意されたのもこの初代1シリーズだったと筆者の記憶にはあり、その時の取材チーム一同で「ついにクルマがパソコンの“周辺機器”になる時代が来たのかぁ」と感慨深く思ったもの。だが、今の現実世界は、こと「繋がる」に関しては、その頃とは比べ物にならないほどの進化を遂げているのはご承知のとおりである。