食わず嫌いの国産ハイパワースポーツに乗ってみた
AMW編集部員がリレー形式で1台のクルマを試乗する「AMWリレーインプレ」。ダイハツ「コペンGRスポーツ」、BMW「118d」に続いて3回目のお題はトヨタ「GRスープラ」、それも2022年に追加設定された「RZ 6速MT」だ。
今回は、これまでの試乗歴がやたら輸入車に偏っている編集部・竹内がスープラを地元のワインディングに持ち込んでみた。同じコースを走ったことのあるライバル車(?)として、ポルシェ「718ケイマン」、アルピーヌ「A110」、ジャガー「Fタイプ」あたりを念頭に置きながらの率直なレポートをお届けする。
武骨な感触のシフトとクラッチが「MT」を主張
都内でスープラRZの6速MT仕様を受け取る。現行型がデビューした当時は正直、線と面の多い構成のデザインが少々クドく感じられたものだが、数年で急激にカーデザインのトレンドが変化した今となっては、スポーツカーとしてしっくり馴染むスタイルに思えてしまうから不思議なものである。ノーズの長さ、ワイドなスタンス、後輪駆動を主張するグラマラスなリアの造形がうまくまとまっているし、ドーンブルーメタリックのボディカラーとタンカラー本革内装の組み合わせも、大人のスポーツカーといった佇まいだ。
シートに身を沈めてクラッチペダルを踏んでみると、その感触が予想外に重めでびっくりした。今どきのMT車としては珍しいと言えるレベルだ。ショートストロークのシフトもゴリっとした硬質な感触で、ある種のノスタルジーをくすぐられる。
単にギヤを自在に操るだけなら8速ATでもパドルシフトでパカパカ簡単にできるし、その方がほとんどの場合、速くて効率的であるのが現代のスポーツカーというもの。あえて6速MTを選ぶユーザーには、シフトチェンジの儀式を存分に味わってもらおうとの心意気なのだろう。
ストレスフリーで乗りやすい今どきのMTスポーツ
とはいえ渋滞している首都高に、武骨な操作フィールをもつ3Lの大排気量ターボ車で突入していくのは気が重い。左足が「つる」かもしれない、そんな覚悟をしてエンジンスタートボタンを押した。
意外やこれが乗りやすい。重めのクラッチペダルもミートポイントは手前にあるので操作が苦ではないし、動き始めから低速のノロノロ域でもアクセル操作に対する出力はじつになめらかでコントローラブルだ。
スープラのMTには、シフトチェンジ時にクラッチを踏めば自動でブリッピングして回転数を合わせてくれる機能「iMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)」が採用されているので、走りモードならずとも、街中や渋滞でのストレスを激減させてくれる。そのマナーは非常にジェントルで、夜の住宅街でも近所に迷惑をかけずにすみそう。
なにより直6ターボエンジンが1800rpmから5000rpmまで最大トルク500Nmをフラットに発揮してくれるから、ストップ&ゴー以外は低速域から高速域まで、ほとんどシフトチェンジせずともAT感覚で走れてしまうのだ。
渋滞の首都高を抜けて東名高速に乗る。流れに乗って走っていても、右側の車線に出ても、普通に走っている限りは回転計が3000rpm以上を示すことはほぼ無い。エンジンは品よく心地よい音を響かせている。ボディ剛性の高さと引き締まった足まわりはしっかり感じられる反面、継ぎ目などの急な突き上げはゆったり収束させるので乗り心地も良好。今どきのスポーツカーのお手本のようなチューニングだ。
しかしここまでは、普段乗りでもストレスなく使えるという話。言いかえれば、日常シーンで直6エンジンを上までブン回せる機会はきわめて稀だろう。そこでワインディングに持ち込むことにした。