初期ロットはすぐに完売
アウディは、フォルクスワーゲングループにおいて電動化への先鞭をつけるプレミアムブランドという位置づけにある。すでに現在、2026年以降に登場する全モデルをBEV(電気自動車)に、内燃エンジンの製造は2033年までに終了する、という戦略を打ち出している。
そうしたなか、日本でも2020年発表のSUVのe-tron/e-tron Sportbackを皮切りに、4シータースポーツモデルのe-tron GT/RS e-tron GTというモデルを展開してきた。そして、今回新たに発売されたのが第3のモデルとなる「Q4 e-tron/Q4 Sportback e-tron」だ。
室内全長はワンサイズ上のQ5を凌ぐ
人気のコンパクトSUV、かつスタートプライスを599万円からと、600万円を切る価格設定とした戦略的モデルである。アウディの狙いは功を奏し、初期ロットはすぐに完売したという。プラットフォームを共用するフォルクスワーゲンのID.4もほぼ同時期に日本に上陸したこともあって、比較検討している人も多いようだ。
BEV専用プラットフォーム「MEB」を採用し、総容量82kWh(実容量77kWh)の駆動用バッテリーを前後アクスル間の床下に搭載。前後のオーバーハングを切りつめ、ホイールベースを2765mmと長くとることで、室内全長はワンサイズ上のQ5を凌ぐ。後席に座ってみても膝まわりなども想像以上にゆったりとしている。またMEBを採用したことにより、センターコンソールの下や、カップホルダー、ドリンクホルダーなどの収納スペースは合計24.8リッターに。ラゲッジスペースは520リッター(Sportbackは535リッター)を確保する。
前後の筋肉質なフェンダーはいかにもアウディらしい
エクステリアでは、最新のアウディQファミリー(SUVモデル)に共通するオクタゴン(8角形)のシングルフレームグリルが特徴だ。グリル内部に目をやると立体的にデザインされているものの、エンジン冷却のために空気を取り入れる開口部がないことから、BEVであることがわかる。前後の筋肉質なフェンダーはいかにもアウディらしいものだ。真横から見るとその違いがわかりやすいが、Q4 e-tronがオーソドックスなSUVスタイル、Q4 Sportback e-tronが少し背の低いクーペスタイルとなっている。
インテリアは、最新のアウディデザインによるもので、メーターには10.25インチのアウディバーチャルコックピットを、センターには11.6インチのMMIタッチディスプレイを配置。センタークラスターをドライバーに向けて傾斜したドライバーオリエンテッドなデザインを採用する。ステアリングホイールは、上下ともにフラットなアウディとしては初となる形状をしている。シフトセレクターは、e-tron GTとも同様に小さな四角いスイッチを指先で前後にスライドさせてギヤチェンジする。最初はもの珍しい感じがするが、慣れてしまえば直感的な操作が可能だ。
駆動用電気モーターを、リアアクスルに1基搭載し、後輪を駆動するRWD。最高出力150kW、最大トルク310Nm を発揮。一充電走行距離は576km(WLTCモード)で、競合となるコンパクトSUVを見渡してみても、姉妹車のVW ID.4(561km)やメルセデス・ベンツ EQA(555km)、ボルボ C40(502km)を凌ぐ性能を実現している。
前後重量比はほぼ均等かつ後輪駆動で運転も楽しい
走行フィールは、BEVゆえの静粛性の高さ、レスポンスのよさ、加速のスムースさは言うまでもない。走行中の回生ブレーキの強さは、ステアリング裏側に備わるパドルシフトで4段階に調整が可能。また、アウディ初というBモードを備えているので、DからBへとシフトすれば、最大レベルの回生ブレーキが得られる。最終的に完全停止はしないので、ドライバーあくまでブレーキペダルを踏む必要はあるが、走行中はいわゆるワンペダルに近いドライブ感覚が味わえる。
試乗車は19インチタイヤ+標準サスペンションを組み合わせたベースモデルだった。乗り心地はソフトで、路面からの大きな入力に対する揺れもすぐに収まる。一見すると背の高いSUVだけれど重心が低いこともあり、ステアリングをゆっくり切り込むと、ロールも少なく安定した姿勢でコーナリングする。前後重量配分はほぼ均等な48:52で、かつRWDということもあいまって、運転がとても楽しいクルマに仕上がっている。
150kW急速充電器ネットワークは約210拠点に
気になる充電に関しては、200Vの普通充電の標準は3kW、オプションとして最大8kWまで対応。急速充電はCHAdeMO規格の94kWに対応している(2022年8月末現在)。アウディ ジャパンはポルシェジャパンとともに独自の150kW急速充電器ネットワーク「プレミアム チャージング アライアンス」を展開しているが、先日新たにフォルクスワーゲン ジャパンの加入が発表された。
これによりドイツ輸入車3ブランドを足し合わせた約210拠点にある、222基の90kWと150kWの急速充電器が段階的に使用可能になるという。これだけの急速充電ネットワークがあれば、ますますBEVの利便性が高まるだろう。
2022–2023 日本カー・オブ・ザ・イヤーは、日産サクラ/三菱eKクロスEV。インポート・カー・オブ・ザ・イヤーはヒョンデIONIQ5。デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーはBMW iXと、奇しくもBEVが主要な部門を占めた。このQ4 e-tronのような手頃なモデルの導入も続き、今年はさらにBEV旋風が巻き起こることは間違いなさそうだ。