アルミホイールを交換する意義とは?
一般社団法人日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会(NAPAC)の中で、アルミホイールの品質基準を司るJAWA事業部。今回はそのNAPACの副会長も兼務するJAWA事業部長である株式会社共豊コーポレーション代表取締役、中嶋敬一郎氏の独占インタビュー第2回目となる。
前回はJAWAの設立経緯や、アルミホイールの安全基準についてお伝えしたが、今回はホイールのデザイン面についてフォーカスを当ててみよう。クルマを買えばホイールがついているのはあたり前だし、最近では純正ホイールにもさまざまなオプションが用意されていて、個性をアピールしやすくなっている。そういう中であえてアフターメーカーのアルミホイールへと交換する意義を訊ねてみた。
「高いお金を払って買った大事なクルマを、カッコよくしたいというのは自然な気持ちだと思います。ただの移動手段としてのクルマなら、走ればいいというものかもしれません。しかし愛車であるなら、同じクルマとはちょっと違う、自分だけのポイントがほしくなるでしょう。
そのときのはじめの一歩となるのがホイールです。純正のホイールはいわば、アルミ製の部品ですが、JAWA会員企業のホイールは、同じサイズであっても個性をアピールできるパーツと考えていただければ、わかりやすいかと思います」
たしかにホイールは、真円の中でデザインしているだけのものにすぎないのに、さまざまなイメージを持つものがある。レーシングカーに使われているホイールのような軽量でスポーティなデザインのものもあれば、見た目的に重量感を思わせるものもある。こういうものや、複雑な輝きを見せる高品位なイメージのものは、ミニバンなどに人気だ。しかしそこで問題となるのが、コピー品の存在である。
「ホイールは円の中でデザインをする、という制限があるために、似通ったデザインとなってしまうことがあります。ときとしてそういったアイテムが係争となることもありました。
コピー品に対するJAWAの対策
そこでJAWAでは、デザインに対する判定委員会をつくり、ホイールの部位を5分割してポイントをチェックし、判定基準に当てはまった場合にはデザインコピーであるという規定を設けています。以前は外部の専門家に判定を依頼していることもありましたが、現在はこういう基準で判定をおこなっています。そのせいもあってか、いまではほぼ問題は起きなくなっています」
しかし、もっと大きな問題がある。それは海外製が中心となる、コピー品の存在である。
「現在日本国内のホイール販売店の多くは、JAWA会員社が扱うJAWA品質認定証が貼付された商品(JAWA認定品)のみを販売しています。そのため、昔のようにデザインのみをコピーした、粗悪なホイールの流通量は減っています。しかし問題はネット販売です。店頭販売とは違って、JAWA認定品であるかどうかの確認がネット販売ではできません。ここで思い出していただきたいのは、ホイールは重要保安部品である、ということです。
コピー品の魅力は価格の安さなのですが、逆にいうと、まったく同じ、もしくはよく似ているホイールなのに、店頭価格とネット価格で大きく差があるというときには、もしかしたらコピー品かもと疑ったほうがいいかもしれません。安全はなににも変えられないものなのです」
海外コピー品を減らすための努力
JAWAではコピー品の存在をなくすべく、さまざまな活動をおこなっている。
「たとえば以前の東京オートサロンのJAWAブースでは、会員企業の新作ホイール展示などをおこなっていました。しかしその直後に、海外市場にコピー品が出回るという事例が数多く見られるようになってしまいました。
そこで現在は、新作展示は各会員企業のブースのみでおこなうようになっています。これは、ブース出展をしていない会員企業にとっては、新作発表の機会を減らすことにもなり、不満の声も聞こえてきています。しかし写真からでもデータを起こすことができる現在、自主的にコピーを減らす動きというのは、おこなっていく必要があると思っています。
また、海外、特にアルミホイールの製造工場が多い中国にもJWL/JWL-TやVIA規格を広げていくための活動もおこなっています。自動車用軽合金製ホイール試験協議会(JWTC)とJAWAが共同で、中国アルミホイール品質協会(CAW)の幹部や加盟社を対象に講習会をおこなうことで、より安全な、高品質なホイール製造を進めていく活動をおこなっています。といってもこれには、時間が掛かってしまうでしょう。海外のメーカーでは製造現場まで意識を徹底してもらうことが、日本では考えられないくらいに難しいからです。それでも、こういう活動は間違いなく必要なことだと思っています」
EV化で求められるアルミホイールの性能とは
ホイールはこの先、燃費や電費面から、タイヤ剛性の向上に伴う大径ナロー化が進んでいくものと思われる。そのときにこの品質の高さというのは、より重要なポイントとなってくる。
「大径ホイールにスリムでローハイトのタイヤをセットする、という現在のトレンドは、これからも続いていくことになるでしょう。この大径ホイールによって、アルミホイールの存在感は、より高いものとなっていくと思います。同時に、細くて大きいホイールというのは、剛性を確保するのがより難しくなりますから、製造技術もハイレベルなものになっていくと思います。
とくにEVで動力源となるモーターは、一気にフルトルクが出ることから、安全性はより重要なポイントとなります。現在の安全基準は、モーター駆動においても十分なものとなっていますので、JAWA認定品は安心して使っていただければと思っています。
ただ、こういったクルマのオーナーさんの多くは、アルミホイールに興味を持っていただけていないというのが問題です。これからはそういった方に、どうやって興味を持っていただくのか、また、興味を持っていただけるようなホイールの開発というのが、大切になってくると考えています。エコカーの機能をさらに向上させつつ、よりカッコいいというホイールの開発ですね。
また、エコという部分でいうなら、ホイールの製造工程で発生する、アルミの切り粉などといった再生アルミ材の利用も推し進めていく必要があると思います。現在は、アルミのインゴットが70%、切り粉などの再生材が30%という割合で使うというのが現実的となっていますが、これを品質を落とさずに再生材を増やしていくという技術革新も必要だと考えています」
最後に、中嶋氏から読者に向けてのメッセージをお願いいたします。
「アルミホイールは重要保安部品です。カッコよさはもちろんですが、それは安全、安心であることが最低の条件となっています。そのため、購入されるときにはJAWA品質認定証が貼ってあるものを選んでください。そのJAWA品質認定証があるホイールの中から、ご自身のセンスにマッチするものを選んでいただきクルマにセットすれば、カーライフがより愉しいものになります。これはスポーツカーでもファミリーカーでも、エコカーでも同じです。ご自身の愛車をカッコよくすること、そのときに安全、安心が担保されること。そのためにJAWA会員企業87(2023年1月現在)社は努力を続けています」