トヨタのモータースポーツ史に残る1台
現代におけるトヨタのラリーカーのベース言えば言わずと知れたGRヤリスということになるが、それ以前のモデルといえばセリカGT-FOURというのが通説だった。
実際、GRヤリス登場以前の4WDターボのスポーツカーは1999年に終売したST205系セリカGT-FOURが最後。GRヤリスはその血を受け継ぐモデルとなっている。
そんなセリカに初めてGT-FOURが設定されたのは1986年のことで、ベースとなったのは4代目モデル。ラリーでの活躍はもちろんのこと、映画『私をスキーに連れてって』の劇中車としての活躍を記憶している人も多いことだろう。
このST165型セリカGT-FOURは車名にもある通り、四輪駆動となったのが最大の特徴だ(先代型までのセリカは後輪駆動でラリーなどに参戦した)。エンジンも新世代の3S-GTEとなったことで大幅に戦闘力アップを果たしたモデルとなっていた。
そんなST165型セリカGT-FOURはラリーの世界でも大活躍を見せ、1990年にはカルロス・サインツのドライブで日本車として初のWRCタイトルとなるドライバーズチャンピオンを獲得した、トヨタのモータースポーツ史に残る1台だ。
ヤリ=マティ・ラトバラ氏が所有しているマシン
今回、大阪オートメッセの会場に展示されたST165セリカGT-FOURは、往年のマルボロカラー(ただしマルボロのロゴはなし)をまとった懐かしいスタイルとなっている。じつはこの車両、トヨタが所蔵する過去のラリーカーではなく、TOYOTA GAZOO Racing WRT(ワールドラリーチーム)を率いるヤリ=マティ・ラトバラ氏が所有する車両なのだ。
ラトバラ氏は2008年にWRCにおける最年少優勝記録を塗り替え(のちにカッレ・ロバンペラが更新)、2019年までトヨタのワークスドライバーとして活躍した人物。現在でもこのセリカGT-FOURを駆ってヒストリックラリーに参戦して優勝を飾るなど、ラリーチーム運営の傍らで現役ドライバーとして活躍している。
つまりこの展示された車両は過去の栄光を懐かしむモデルではなく、バリバリの現役ラリーカーなのである。ちなみにラトバラ氏はさまざまな車両を所有しているそうだが、なかでもセリカは5台(ST165型2台、ST185型2台、ST205型1台)とかなりのセリカフリークでもあるようだ。