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クラシックカーでラリーに参戦する醍醐味とは?「カルマンギア」や「ビッグヒーレー」を経て「MG TD」を選んだ訳とは

以前はフロントフェンダーがクラムシェルだった

PC競技に向いていないMG TDでチャレンジ

MGという車名は、いまなおブリティッシュライトウェイトスポーツカーと同義語となっている。ある人はMGと聞いた瞬間に戦前のミジェットやTシリーズあたりをイメージしたり、またある人は1960年代を代表するスポーツカーである2世代目のミジェットや累計生産台数が50万台以上に達したMG Bのことを想起するかもしれない。そんなクルマでPC競技にチャレンジするオーナーに、どうしてMG TDを選んだのかを訊ねてみました。

長きにわたって現役だったTシリーズの完成度が非常に高かった

今回ピックアップするMG TDも自動車趣味人であれば誰もが知っているクルマなので、MGといえば「TD2000と呼ばれるリプロダクションモデルが発売されたことがあるTDだよね」と主張する熱きブリティッシュライトウェイトスポーツカー好きも少なからずいるはずだ。

戦前から親しまれ、1955年まで生産されたMG Tシリーズは、1936年にデビューした最初期型のTAから最終モデルのTFまで発展した。そのため、旧さを隠しきれないまま継続販売されていたわけである。ちなみに、Tシリーズの次期モデルとして登場したのが、MG初の戦後型スポーツカーとなるMG Aだった。

参考までに記しておくと、MG Aは戦後型のスポーツカーであったとはいえ、MG TDをベースとしたル・マン用のスペシャルモデル(1951年発表)、実質的にMG AのプロトタイプとなったEX175(1952年発表)、ナッフィールドグループのデザイナー案を採用したTDベースのMGプロトタイプ(1953年発表)、ル・マンに参戦したEX182(1955年発表)を経て、ようやく発売された。そのため、Tシリーズのそれを発展させたフレームを持つ、クラシカルなクルマだったといっていい。

別の言い方で説明すると、長きにわたって現役だったTシリーズの完成度が非常に高かったということで、いまでもMG TDをはじめとする歴代Tシリーズを愛用しているファンが多いのであった。

2022年11月24日~27日に開催された「クラシックジャパンラリー2022 門司」に、1952年式のMG TDで参戦した山本正文さんもそのひとりで、コ・ドライバーの布留知美さんとのペアで、上位クラスとなるAクラスの2位でフィニッシュした。

PC競技に特化したスペシャル仕様にモディファイされている

クラシックカーラリーは、決められた区間を主催者が設定した時間でいかに正確に走行することができるか? を競う「PC(Prove Cronometrate:イタリア語でタイムトライアルの意)競技」で順位をつけているが、山本さん曰く、MG TDはPC競技に向いていないクルマなのだという。そうは言うもののAクラスの2位だったので、いろいろ伺ってみたら、愛機のMG TDをPC競技に特化したスペシャル仕様にモディファイしていた。

「最初、1968年式のフォルクスワーゲン カルマンギア カブリオレでクラシックカーラリーに出ていました。横浜開港Y153のときだったので、2012年の話です。1年ぐらい経ってビッグヒーレー(オースチン ヒーレー 3000)のMk-1、1960年式が見つかったので、それに乗り換えたのです。このクルマでは2年間ぐらいPC競技をやりました。ビッグヒーレーはパワーがあるのでPC競技に向いていましたが、ボディが大きいので取り回しが大変。その後、よ~し、PC競技に向いていないMG TDでやってやろう! と思い、1952年式を手に入れました」

PC競技に向いていないとわかっていたのに、なぜ購入したのか尋ねると山本さんは次のようにコメントした。

「MG TDは、足まわりがイイ意味でやわらかく、少し出っ張っているマンホールなどの段差を通過しても、それをまったく乗員に感じさせません。それほど乗り心地がイイ足まわりになっています。ということは、急ハンドルなどを切るとかなり車体がロールしてしまいます。また、直線でのブレーキング/アクセルオンでクルマがピッチングによってシーソーのように上下するので、線踏み競技のときの見通しとして使っているマーカーのズレが激しくなります。

さらに、MG TDのノーマルハンドルはお腹に当たるぐらいの大きさなので、ここ最近の難しいPC競技には向いていません。全然無理だと思います。エンジンはパワー不足を感じますが、これは腕次第だと思うので、大丈夫でした」

そんなMG TDでPC競技に挑みながら、当初、レーシングスクリーンを装着したり、ハンドルを変更したりするぐらいのことしかしていなかったとのことだが、PC競技にどんどんのめり込んでいったときに足まわりを変更することにしたのだという。

「まず足を固める作業に入ったときに、ダンパーがフロントフェンダーに当たってしまうことが判明。そこでフロントフェンダーをクラムシェルからサイクルフェンダーにしました。足まわりのセッティングが決まってきた頃から、PC競技に向いているクルマになりましたね」

好成績を残している山本さん/布留さんペアのMG TDは、これからTシリーズでクラシックカーラリーに参戦しようと思っている自動車趣味人のよき指標となるだろう。

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