街道レーサーにいま注目が集まる
昭和のカスタマイズ史に衝撃を与えた歴史はピリオドを打つことなく、平成、令和となった現代も受け継がれ、進化を遂げている。レーサーレプリカ、グラチャン、ワークス、シルエット、ハイソカーと、時代の移り変わりと共に楽しみ方の幅を広げていった「街道レーサー」。実は今、熱かったあの頃のマシンを思い出し再現するクルマ遊びが一部の中高年を中心に流行っている。なぜなら彼らにとって、あらゆるパーツが手に入れられるようになった今が、いちばん自由で楽しかったりするわけだ。
2023年もOAM(大阪オートメッセ/通称オアム)恒例の4号館は、昔ながらのカスタムカーで埋め尽くされていた。中でもAMWが注目したのが、VIP界の大御所としてその名を轟かすKブレイクブースに展示されていたトヨタ「MZ10ソアラ」だ。
愛情を注いだソアラベースのシルエットマシン
Kブレイク大林代表はショップを立ち上げる前から街道レーサー乗りとして全国的に知られる有名人。四輪、二輪も含めてジャンルの垣根を飛び越えて、あらゆる改造車に精通していることでも知られている。
体はひとつだけど、車両は両手を使っても足りない台数を所有する大林代表。街道レーサーマシンとして昔から乗り続け、仕様変更を繰り返しながら愛情を注いで作り込んだのが今回紹介するMZ10ソアラベースのシルエットマシンだ。
根っからの改造好きとして街道レーサーには特別な思いもあるため、その作り込みには細かすぎるこだわりが詰まっている。本当のクルマ好き、改造好きなら、この姿を見ただけで、その凄さが伝わることだろう。
まさに「THE昭和の不良」のクルマといわんばかりのシルバーと紫に塗り分けされたレーシングカラーは、光り輝く7色ラメを使って仕上げられている。
激しくワイルドな印象を与えるエアダクト付きのデッパと懐かしのスリットライトジャケットが凶悪なまでにその存在を主張。エッジの効かせ方はこのクルマの特徴にもなっているが、その印象をより鋭く魅せる工夫として、特にこの2点が効いている。
当時物のパーツを使って仕上げるこだわり
シルエットマシンのレーシーさをより引き立てる……、そんなテーマで装着するパーツは、基本的にシルエットボディ合わせの作りになっているが、そのベースになるエアロパーツは貴重な当時物を使って作り込んでいるのが大林代表の改造流儀である。
パッと見ではわからないが、サイドステップとリアバンパーについては、当時流行ったヤマト製をベースに加工を施したパーツを装着させている凝りようだ。
エッジの効いたラインが特徴のリアウイングはキダムオリジナルで、一見すると往年のセブンパネのようにも思えるが、より角度を付けて鋭角に立ち上げているのが他の街道レーサー達が装着するモデルとは違う点。
このウイングに加えて、さらにシルエットウイングを追加装着させたことで強烈な存在感を発揮する1台として完成させた。
どうせ作るなら自分だけのスペシャルマシンでありたい。それがすべて現車合わせで作る街道レーサーならば、自分流をとことん楽しむことはごく普通のことになる。改造職人が本気で取り組み愛情を注いで作ったマシンは、当然のことながら特別な存在感を放っている。これぞシルエットといわんばかりのバランス感覚で仕上げられたソアラに、OAMに訪れた多くの改造マニア達は足を止めて食い入るように見入っていた。
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ちなみに、最初にも説明した通り、このクルマのオーナーはVIPカーのカスタムショップとして有名なKブレイク大林代表の愛車だ。さすがに昔と違って今は有名ショップのオーナーなので、このソアラは違法改造車ではなく、しっかり公認を取っているクルマであることを付け加えておきたい。