カーマニアなら興味惹かれるノーマルのようでちょっと違うGR86
260社560台が大阪に集結し、大盛況のうちに幕を閉じた「OAM(大阪オートメッセ)2023」。XaCAR 86&BRZ Magazineブース(以下XaCARブース)には、スパークレッドの「GR86」を2台展示した。1台は2023年のアニメ化が決定した大人気のカー漫画『MFゴースト』の世界を新型GR86で再現した「GR86 MFGコンセプト」。多くのファンが足を運んでいたが、カーマニアとして興味を惹かれたのはもう1台のGR86だ。
新型で気になる部分を誰もが楽しめる範囲で好みにプチカスタマイズ
今回紹介する車両は、初代トヨタ「86」のデザイナーであり、現在もチューニングパーツメーカー「SARD」のエアロパーツやカーグッズのデザインを手掛け、さらに画家としても活動する「古川高保」さんの愛車。
カーラッピングで初代86の限定車「Cb」を彷彿させる2トーンカラーとしている以外はエアロパーツの装着もないのだが、ノーマルの86よりも全体に統一感があり、グッと引き締まった印象に見える。古川さん本人もXaCARブースに在中されていたので、「その秘密」について直接本人から話を伺う機会を得ることができた。
「カーデザイナーのひとりとして、そしていちユーザーとして新型GR86で気になる部分を自分好みにプチカスタマイズしています。わたしはユーザーの手に渡り愛車となったらオーナーのやりたいようにやればいい、と考えています。
トヨタ在籍時にとあるイベントで、BRZに乗る85歳の方が、こつこつ自身でカスタマイズを楽しんでおられる姿を拝見し、いたく感動した覚えがあります。いくつになっても、クルマいじりは楽しめる。そのひとつの例となるような、誰もが楽しめる範囲でのモディファイを行っています」
最新のラッピングを多用し赤とガンメタのツートーンコーディネイト!
「あくまでも私見ですが」と前置きしたうえで、古川さんは続ける、
「ツートーンとしたのは、初めて新型を見たときフロントピラーとフロントフェンダー/ボンネットの距離が離れすぎていて、近くで見るとキャビンが外れて見えたからです。そのため、ボディにキャビンを載せたようなデザイン(のっけキャビン)と見えるように、ピラーからルーフに至るまで黒に近いガンメタでラッピングして、赤とガンメタでコーディネイトする構想はすぐに決まりました。黒としなかったのは上屋のイメージが重くなり過ぎると思ったからです」
ラッピングか、というなかれ、現在のラッピングは著しく進化しており、ツヤ感も質感もパッと見では塗装と遜色なく、屋内保管ではあるが施工してから1年以上経過しても退色などの変化もなしとのこと。「十分使えるレベルにあります」と古川さんも納得だという。
「リアも左右のコンビネーションランプをつなぐ黒のリアガーニッシュが目立ちすぎると感じましたので、ルーフと同じ素材でトランクの側面をラッピングしました。カラーを近づければ存在は分かりにくくなりますよね」
リアのGR86エンブレムを45mm内側に移動した理由とは
さらにフロントバンパー/ドア下にも同様のラッピング素材でアクセントを加え、フロントのサイドマーカーも赤でラッピングを施している。これにより、リアフェンダーのエクステンションパーツとの統一感を図るなど、ちょっと手を加えることで純正のイメージを一新している。
また、86ファンなら気が付くと思うが、リアのGR86エンブレムは少し内側に(45mm)移動している。
「車名が曲がって付いているのがどうしても許せなくて(笑)。遠目で見ると分からないかもしれないですが、スポーツカー好きな人たちは細部まですごく真剣に観察されるので、あらゆる位置でどう見えるのかまで気になりますね。もちろん、今のデザイナーにも考えがあるので、わたしの意見が正解ではありませんが」
また、エンブレム類、マフラーのテールエンドはキャンディレッドに塗装して純正のメッキ感を抑え、ボディ全体に落ち着きを持たせている。そのほか、ドアハンドル、ホイールリム、ホイールナットもキャンディレッドのアクセントを追加した。ブレーキキャリパーは耐熱塗装で赤に塗装するなど、細部に至るまで赤とガンメタでトータルコーディネイト。スタイリッシュかつ、低重心に見える個性的なスタイリングを作り上げているのだ。
1セット1000円程度の隙間テープは安くて効果的なオススメアイテム
「カスタムではないのですが、ボンネット/トランク/ドアのパネルクリアランスが広すぎることが気になったので、すべてにエーモン製の隙間テープを貼っています。ビジュアル面もさることながら、隙間が埋まったことで、空力的にもよくなりますし、内部にほこりやゴミなどは入りにくくなり、室内に入るノイズが減りました。1セット1000円程度で確実に効果が得られるのでかなりオススメですね」と古川さん。
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家は買ったままで住み続けることはなく、カーテンや家具家電など好みにアレンジしながら、自分の理想に近づけていくもの。それと同じように、クルマもオリジナルのまま乗るのではなく、心地よく過ごせる、思わず乗りたくなるようなコーデを楽しんでもいいのではないだろうか。
クルマイジりには費用がかかると考える人は多いと思うが、さほど費用を掛けなくても、際立つカスタマイズができることを古川さんのGR86は証明している。何より、「ああしたい」「こうしたい」と悩む時間が楽しいのは、家のカスタムもクルマのカスタム同じだから。