クルマで好きなところに行って簡単に宿泊できる「ルーフテント」
最近、キャンプブームのなかで注目を集めているギアが「ルーフテント」です。オートキャンプならではのアイテムは、その名の通りルーフ(屋根)にテントを装備するもので、設営の手間も簡単に済むのが大きな魅力。ここでは、ルーフテントに注目し、その魅力に迫ってみたいと思います。
ミニバンを改造する「ポップアップルーフテント」は憧れの存在
ルーフテントはオートキャンプの普及とともに進化を遂げています。ひと口にルーフテントと呼ばれるアイテムにも種類があり、キャンピングカーの装備として開発されたポップアップルーフテントや、耐候性の高いABS樹脂のシェルを持つアイテム、通常のテントのように幌布やポリコットン布地を使用したものなど多岐にわたるのが特徴です。
ポップアップルーフテントとは、バンコンなどのキャピングカーをベースに、車内の宿泊スペースを拡大するためにルーフに加工を施したものを指します。ひと昔前ではフォルクスワーゲン「タイプ2」(ワーゲンバス)や「カラベル」、最近ではトヨタ「ハイエース」やメルセデス・ベンツ「Vクラス」などをベースに仕立てたキャンピングカーに使われることが多く、国産車では利便性の高さからマツダ「ボンゴフレンディ」にメーカー標準で採用されたこともありました。
その特徴はミニバンならではのルーフの長さを活かし、ルーフ部分に折り畳み式のテントをポップアップさせることでルーフ部分がテントに早変わりするというもの。就寝スペースだけでなく即席のリビングルームとしても活用することも可能。現在ではキャンピングカーの架装ショップが後付けとして装着することが多く、装備するには屋根に穴を開ける勇気と高額な予算が必要になります。
ルーフレールを利用するタイプは形状もさまざま
一般的に普及しているルーフテントはクルマのルーフレールに装着するタイプを指し、ルーフレールに専用のアタッチメントで固定するのが基本。ルーフレールのないクルマの場合にはレインガーターやルーフサイドにキャリアを装着した上で固定することになります。
ただし、注意してほしいのはルーフレールやキャリアの耐荷重をしっかりと確認すること。ルーフレールが装備されているクルマでも、極端に耐荷重が低く設定されている車種もあり、テント本体やマウントの重量とともに使用時の体重などを加えた重量に耐えられるかを確認することが必要です。
ルーフテントにはシェル型、テント型、タワー型などがあり、形状やサイズによって使い勝手が異なるので、使用する人数や自分のキャンプスタイルに合ったアイテムを選びましょう。
ちなみにシェル型とはABS樹脂などのシェルを開閉することでテントとして使用できるものを指し、テント型はその名の通り布製のテントで構成されます。タワー型はシェル型を縦に伸ばす4本の柱をもつ構造が特徴となり、なかにはダンパーを使い自動的に昇降できるものも存在します。価格的には平均して20万円前後と決して安くはありませんが、ペグ打ちやガイロープの設置、フライシートの追加などの必要がなく、簡単に設営/撤収できるのは大きなメリットといえるでしょう。
また、屋根の上という見晴らしの良い高い場所にテントがあるために風通しが良く、夏のキャンプでは風が吹き抜けることで快適さが味わえます。一般的なテントよりも侵入しにくいルーフ上は防犯効果も高く、野犬や野生動物の被害も心配しないで済むのもルーフテントならではの特徴です。
物理的なデメリットを踏まえ、よく考えて選ぼう
多くのメリットがある一方、ルーフテントのデメリットはクルマからテントが切り離せないため、キャンプサイトまでクルマが乗り入れられるオートキャンプ場のような場所でなければ使用でません。そして、クルマの屋根という高い位置にテントを張るため、テントへの出入りに専用のハシゴを使って上り下りする苦労が伴い、遮蔽物の無いルーフ上は目立ってしまうのも難点といえるでしょう。屋根の上は風通しが良いものの、風の影響を受けやすいためにテントが揺れてしまうのもルーフテントならではの泣き所です。
一度、ルーフに装着してしまうとクルマから取り外すのが面倒であり、取り外してしまうと保管する場所が必要になることから、多くのキャンパーは屋根に積んだ状態にしている人も多いようです。テントを閉じた状態でも全高が高くなることから高さ制限がある駐車場が使用できないことや、低い高架下が通れなくなる……などの制約が生まれてしまいます。
また、ルーフに積載した状態では走行中に受ける風の抵抗と重量が影響して燃費が悪くなるというデメリットや、ルーフ上に重量物を載せることで横風の影響を受けやすくなり、ロールセンターが高くなることでコーナリング時の運動性能が落ちてしまうことも頭に入れておきましょう。
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設営や撤収が簡単でインスタ映えするルーフテント。高額なキャンピングカーには手が届かなくても、装着するだけでキャンピングカー的な楽しさが味わえるのも大きな魅力と言えそうです。車中泊ならぬ車上泊は新たなキャンプスタイルとして今後さらに人気が高まる予感がします。