80年代の社会現象「環状族」とは
関西を代表する走りの聖地といえば大阪環状線だ。1980年代後半の大阪阪神高速環状線は、暴走する若者で溢れていた。土曜の深夜、1周10.4kmの環状線が爆音と共にサーキットと化す瞬間があった。4車線の周回路とも呼ばれたコースを縦横無尽に駆け回っていたのは、硬めのサスを組み、思いっきりシャコタンにして飛び回るように走るEF/EGシビック軍団だった。その呼び名は「環状族」。もはや都市伝説的な存在になっているが、関西にストリートシーンを語る上で、環状族は外せない。
漫画の影響もあって人気のシビック
環状族は、レーシングカーに寄せたデザインが数多いことでも知られている。その理由は、中山サーキットで開催されていたシビックワンメイクレースの影響があった。一説によると、当時、中山仕様のレースカーが走っていたなんて噂もあったほどだ。また、近年では大阪環状族をリアルに描いた漫画『ナニワトモアレ』の影響もあり、特に大阪にとってEF/EGシビックは特別なクルマとして扱われている。
OAM2023でも数多くのシビックが並べられていたが、その中でひと際異彩を放っていたマシンが、ビス止めアートスタイルのEG6シビックだ。
今どきの大阪環状スタイル兼サーキット仕様として製作されたマシンは、出来る限り太いタイヤを履かせるために前後ともロケットバニーのフェンダーを装着している。
また、ダクトの形状が独特のフロントバンパーはアトミック製を選択、アンダーリップはロケットバニーZ33用を流用加工で取り付け、左右にカナードをセットする。
サスペンションはクラックスの車高調キットに、スプーン製の4ポットキャリパー、レイズのTE37ホイールにヨコハマ・アドバンSタイヤを履かせていた。
エアブラシで描いたビス止めは数百個
室内はアンダーコートまで剥がして徹底的に軽量化し、ボディ剛性を高める効果と安全面を考えてロールゲージが組まれている。また、純正タンクを廃止し、トランクにはレース用の安全タンクを搭載。
エンジンはB16のパワーユニットからインテグラに搭載されていたB18Cに載せ替え。トランスミッションは純正5速MTながらもファイナルギアは4.7に変更。これによってエンジン回転の上昇が速く、小気味よいシフトアップが楽しめる作りになっている。
ボディリメイクについては、戦闘機をイメージしてエアブラシを使ってビスを数百個描いてある。ひとつのビスを描ききるために4回も塗り重ねたため、とても苦労したそうだ。オーナーにもう一度やりたいかと聞くと、「もう二度とやりたくない」とのこと。精神的にもキツイ作業だったという。
現在、マフラーがドレスアップスタイルなので、今後は直管の1本出しストレートにするとのことだった。
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新型シビックが登場し話題になっているが、やはり昭和世代にとってのシビックといえば2BOX 3ドアのEKまでのシビックだ。
単純に速さだけなら、現代の最新モデルにはかなわないだろう。だが、この時代のシビックには操る楽しさがあり、運転手の技量次第で格上のマシンをカモるポテンシャルも持っていた。それが80年代を駆け抜けたクルマの面白さだった。そうした80年代を懐かしく思い出させてくれた1台であった。