先進安全装備を充実させ“より魅力的”な1台に
いよいよルノー カングーの新型、3代目が日本に上陸した。およそ14年ぶりの完全新開発ということは、通常のモデルライフからすれば、一気に2世代新しくなったということだ。
アウトドアユースにもこだわった乗用車だけに、今回は荷物の積載性を含むパッケージの進化について旧型を交えながら解説しよう。
頑丈さを表現しているエクステリアデザイン
まず、報告したいのは、これまでのカングーはLCV(Light Commercial Vehicle)と呼ばれる商用車要素70%、乗用車要素30%とされていたのだが、新型は商用車要素50%、乗用車要素50%の商品特性になっていることだ。これは、日本では乗用利用の一般ユーザーがほとんどということもあり、進化として大いに歓迎すべき点だろう。
ボディサイズは全長4490mm(4280mm)×全幅1860mm(1830mm)×全高1810mm(1810mm)でホイールベースは2715mm(2700mm)となる(カッコ内は旧型モデル)。つまり、先代に対して210mm長く、30mm幅広くなり、全高は先代と同じ。ホイールベースは15mm伸ばされている。
また、Aピラーの角度を寝かせ、フロントマスクにクロームパーツを奢り、サイドウインドウを薄くして下半身の安定感はましている。さらに、ダブルバックドアを備えたリアはルーフから下に向かってショルダーを張り出させることでリアビューからの安定感、頑丈さを表現しているのも新型らしさ。
新型カングーは日本仕様として特別に仕立てられている
グレードはインテンスとクレアティフ(ベーシックグレードのゼンは受注生産)があり、インテンスはボディ同色バンパー、ドアアウターハンドルとなり、16インチとなったアルミホイールを装着。一方、クレアティフの方は日本仕様専用車としてブラックバンパー、ブラックドアハンドル、渋いスチールホイールの仕様となる。ちなみにインテンスとクレアティフは、装備的にはインテンスのほうが上級となるものの、異例にも同価格!? となる。
新型カングーの大きな特徴として挙げられるのが、日本仕様として特別に仕立てられているということ。いかにも今のルノーらしい洗練されすぎた先代までのカングーファンにとってフロントマスクの好みはともかくとして、先代のアイコンでもあった観音開きのダブルバックドア(当初は日本仕様のみ。現在は欧州仕様にも追加)、樹脂むき出しのブラックバンパーの組み合わせを、ルノージャポンが“日本におけるカングーらしさ”としてリクエスト。それが叶ったというわけだ。
エンジンはガソリンとディーゼルをラインアップ
パワーユニットは先代ガソリン車の古い1.2Lターボから、一気にルノー最新の定評あるルーテシアなどにも採用される1.3Lターボになった。ディーゼルターボは先代からのキャリーオーバーユニットだが、トルクアップが施されているのが特徴だ。また、トランスミッションはガソリンターボ、ディーゼルターボともに2ペダルのセミATの7速EDCのみとなる。
さて、両側スライドドア(依然、パワー機構なし)、ダブルバックドアの実用性が示すように、カングーは「遊べる空間」をテーマにした、大容量ワゴンとしての機能性を持つユーティリティカーの鏡と言っていい存在だ。そこでまずは新旧型のパッケージングについて実測したので、報告したい。
後席のかけ心地は依然として快適そのもの
前席の乗降性にかかわるサイドシル地上高は新型400mm、フロアはそこから35mm低い位置にある。先代は同390mm、55mmだったから、高さ的にはほぼ同じで、段差は減少。乗り降りがしやすくなったと言っていい。
身長172cmの筆者のドライビングポジション基準(以下同)での前席頭上空間は330mm。先代は350mmだったものの、いずれも天井が遠く感じられるほどのスペースがある。もちろん、便利なフロントオーバーヘッドコンソールも継承し完備する。なお、シートサイズは座面長、シートバック高がより伸ばされている。
インテリアでは、7インチTFTデジタルメータークラスター、8インチマルチメディアディスプレイの採用、質感を大きく高めたインパネ周り、2ゾーンオートエアコン&後席エアコン吹き出し口、電子パーキングブレーキの採用などが大きな特徴となっている。
3座独立(分割は6:4)の後席と言えば、乗降性にかかわるサイドシル地上高480mm、フロアはそこから110mm低い位置にあり、スライドドア開口部は幅650~660mm、高さ1120mm。先代はサイドシル地上高が460mm、フロア110mm、スライドドア開口部が765mmで高さが1130mmだ。幅方向はやや狭まっているが、乗降により影響する高さ方向、サイドシルとフロアの段差はほぼ同じである。
オーバーヘッドコンソールはフロントのみに
筆者のドライビングポジション背後に着座すれば、頭上にこれまた頭上空間たっぷりの250mm、膝周りに130mm(畳んだシートバックテーブル含まず)。着座性、立ち上がり性にかかわるフロアからシート座面先端までの高さ=ヒール段差は390mmとなっている。
先代は285mm(頭上空間)、190mm(膝周り)、400mm(ヒール段差)で、頭上空間、膝周り空間(※)は新型がやや狭まっているものの、着座の快適性にも影響するヒール段差は同等。クッションの改良もあって、後席のかけ心地もまた依然として快適そのものだ。ただし、先代にあった、ルーフ中央部分のオーバーヘッドコンソールは見当たらない(フロントのみとなった)。
※ 後席膝周り空間が狭くなっているのは、前席のシート位置がより低く(最下端位置で約30mm低い)なったことも一因かも知れない(シートバックの角度との関係)。
なお、シートサイズは新型、先代ともに同等サイズとなっていた。また、後席用オーバーヘッドコンソールの廃止とともにちょっと惜しいのが、スライドドア部分の窓の昇降。先代は100%下がったのだが、新型は90%程度。完全に下まで開かない。
と、ここまでの実測データで気になるのが、後席膝周り空間の減少(筆者基準で190mm→130mm)だ。全長が210mmも伸びているのになぜ? である。
新型カングーは「クラストップの積載容量」を目指して開発
しかし、それには理由がありそうだ。というのは、全長が210mm伸びたのは、おそらくデザイン的なもので、むしろホイールベースが15mmしか伸びておらず、さらにこれから説明するラゲッジルームの容量アップが、その秘密と考えられるのだ。
新型カングーは「クラストップの積載容量」を目指して開発されている。実際、商用車ベースゆえの四角四面で出っ張りのない使いやすいラゲッジルームは、後席使用時の容量で先代より115L増えた775L、後席格納時では先代より132L増しの2800Lを実現。
寸法としては後席使用時の奥行きは先代比+100mmの1020mm、後席格納時で先代比+80mmの1880mmとなっている(メーカーデータ)。つまり、新型は後席より「クラストップの積載容量」を目指すため、キャビンに対してラゲッジスペース優先パッケージとなり、それゆえに後席膝周り空間はやや減っていると考えられる。
なお、ダブルバックドアを継続採用した(当初は日本仕様のみの設定だった)ラゲッジルームの開口部地上高は、先代の545mmに対して新型が実測570mm。世界のステーションワゴンの平均値が620mmだから、依然、重い荷物の出し入れは楽々である。
ちなみに、ダブルバックドアが最初に開く左側を全開にしたときの車体後部に必要なスペースは、先代の995mmに対して新型は825mmと、より車体後方が狭い場所でも開けやすくなっていた。いずれにしても、室内空間のゆとりは依然カングーならではで、荷物の積載性、積載力が増したことになる。つまり乗用ユーティリティカーとしての資質が一段と高まったことは間違いない。
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今回の新型カングーのパッケージング新旧型比較の報告はここまで。このあと、新型ガソリンターボ、ディーゼルターボのそれぞれの試乗記(カングー初の先進運転支援機能の搭載の詳細含む)、ガソリンVSディーゼルモデルの走行性能比較、アウトドア目線での新型の実用度、そして愛犬家&愛犬目線での使い勝手検証などについてあらためて報告したい。