圧倒的乗りやすさの理由は車重と重心高とサスペンションのバランスの妙
少し難しいことを述べたが、この日に女神湖で乗った車種のなかでは、じつは一番乗りやすく、思ったように加減速でき、素直に曲がれると感じたのが、e-4ORCEを採用した「アリア」や「エクストレイル」以上に、このサクラであったことは驚きだった。
もちろんe-4ORCEはきわめて緻密な駆動制御を行うものだが、こうした低ミューでは、車重と、さらに重心高もただ低ければいいというわけではないことを悟ったのだった。
サクラの車重は軽自動車としては重い1t超えの1080kg(試乗車「G」)である。しかし、これが165/55R15サイズのタイヤにとっては、好ましいグリップが得られる高い接地荷重をもたらしている。
そのうえでBEVとしては、極端に低くない重心高が逆に好ましく働き、低ミュー路においても、ブレーキングや旋回時に、しっかりとした荷重の移動がゆったりしたタイミングでなされることになる。ここには、サスペンションチューニングの巧みさも加わる。
これらと、日産のBEVらしい緻密なトルクコントロールとが相まって、なんともラクに走り出せて、いろいろな技を繰り出す必要もなく狙ったラインに持っていけるし、かつ安定した旋回ができてしまうのだった。
さらにいえば、重量は慣性として効くので軽としては重いといっても1.1tに収まる車重のおかげで、滑りだしてからの動きも穏やかで、グリップが回復するまでも速い。つまり、種々のバランスの良さも光るのだ。
雪国の日常車として想像以上の実力を感じた
雪道での上り勾配や深雪などでは、当然ながら発進性においてAWDに対してはキツい場面もあるだろうことは想定されるとしても、今回の超低ミュー路ドライビングにおける圧倒的な手の内感、安心感から、積雪地においても日常の足とするのに適した1台だと思える。
極低温時におけるバッテリー能力への影響や、ヒーター使用時の電力消費増加の問題などまだ課題が残るのは事実だが、サクラが、走りにおいて、実用車として、雪や氷雪路でも予想を越えた走りやすさ、扱いやすさを備えていることを強く実感したのだった。