GT-R専門店かと思うほどピットにGT-Rばかりが並ぶ名店
ドラッグレースで8秒台、鈴鹿やセントラルなど西のサーキットを中心にトップクラスのタイムを刻むなど、兵庫県のGT-Rショップとして名を馳せる「ENDLESS」。本来はGT-Rだけを取り扱うショップではないのだが、ファクトリーに入庫するのはほぼR32〜R34の「スカイラインGT-R」、もしくは現行モデルであるR35「日産GT-R」のみと、ピットはいつも専門店のような雰囲気となっている。「大阪オートメッセ(OAM)2023」には代表の杉野康人さんが全国チューニングプロショップの連合体「CLUB RH9」の西日本ブロック長であることから、今回はCLUB RH9の一員としてブース出展した。
2023年はユーザーに近いブーストアップ仕様でタイムアタックに挑戦
ブースには2台のR35にR32が1台の計3台のGT-Rを展示。さりげなくワイドボディ化されたR32はすでに紹介しているので、今回は同社のデモカーであるガンメタ(ダークメタルグレー/1号機)のR35をクローズアップしたい。
VR38DETTエンジンはHKSの4.3L排気量アップキットをベースに、同じくHKSのGT4950BBタービンを組み合わせ、最高出力1000psオーバー、最大トルク127kgmまでパフォーマンスを高めた。ここ数年はどこまで高みを目指せるかをテーマにタイムアタックイベントに参加していたが、2021年12月に鈴鹿サーキットで開催されたCLUB RH9鈴鹿サーキット走行会で、エンジンにトラブルを抱えてリタイアしてしまう。
「もう1度、同じ仕様のエンジンを搭載しようとも思いましたが、タイムアタック2号機(紫のR35)もありますから、究極はそちらに任せて、お客さまが真似できるようなブーストアップ仕様でどこまでいけるか、やってみようと考えました。以前からこの構想はありましたが、調子のいいエンジンをわざわざ降ろしてまではね。今回はいいきっかけだったかもしれません」と杉野代表。
今後増えるであろうエンジンO/Hを見越したステップアップとして提案
杉野代表にそう決断させたのは、2020年式以降に採用されている純正タービンのポテンシャルの高さもある。単なるブーストアップでも簡単に600psオーバー、周辺環境までトータルで見直せば700ps。それ以前のタービンでは考えられないほどパフォーマンス向上が狙えるのも魅力に映った。これなら大容量でも高額なNISMOタービンではなくてもいい、と判断。
「エンジンは高出力化に対応するため、ピストンとコンロッドを強化品に変更した3.8L仕様に社外カムをセットし、これにMY20タービンを組み合わせています。ムービングパーツを交換するのは、今後増えるであろうオーバーホールやアップデートを見越したているため。どうせエンジンをリフレッシュするなら、こうした仕様はどうですか? という提案も含んでいます」
「エンジンまわりとトランスミッション(今回の仕様変更でHKS強化からノーマルに戻した)以外はこれまでのデモカーのものをそのまま使い、まずは鈴鹿2分10秒切り、セントラル1分20秒切りが目標です。これは数年前のタービン交換仕様と同等ですから、十分に速いでしょう」
絶対的な速さよりもクルマ遊びとして楽しめるかを優先
ショップとしてタイムを出すことも必要だが、それ以上に大事なのはユーザーに喜んでもらえること。現実的な仕様ですごいタイムを出す方がより身近に感じてもらえる=サーキットに足を運んでもらえる可能性が高まると杉野代表は考えているのだろう。
「1000psは誰でも扱い切れるものではありません。個人的にはガチガチなタイムアタックではなく、自由な走行会で楽しめるのが理想で、速さうんぬんかんぬんではなくて、自分でドライブして『楽しかった、また行きたい』と思ってもらえればいい。今回のスペックは、ノーマルやこれまでのブーストアップ仕様では物足りない人に向けたステップアップの700psなのです」
速さを追い求めるのではなく、壊さず長く乗り続けたい。生産開始から15年を経て、第2世代GT-Rと同様にファンから愛されるクルマとなったR35。ハードチューナーというイメージは昔の話。エンドレスは時代の変化を敏感に察知し、つねにユーザーに寄り添ったマシンメイクを施してくれる、クルマ遊びの楽しさを知り尽くす名ビルダーなのだ。