「AMG」ブランドとなった新型「SL」の最強バージョンにカリフォルニアで試乗
メルセデス・ベンツ伝統のロードスター「SL」がフルモデルチェンジされ、新たに「メルセデスAMG SL」の車名が掲げられることになった。メルセデスAMGといえば、メルセデス・ベンツの各車に高性能なスポーツモデルを設定し、究極のパフォーマンスをカスタマーに提供するサブブランドとして、すでに広く知られている存在。その頂点に位置するのは同社が独自に開発した「GT」シリーズにほかならないが、今回新型SLがメルセデスAMGのブランドとなったことで、カスタマーにとってはパフォーマンスの選択肢はさらに広がったことになる。
直4バージョンは日本市場に上陸ずみ
今回試乗したのは、このメルセデスAMG SLのラインナップで頂点に立つ、「SL63 4MATIC+」だ。日本にもすでに新型SLは上陸を果たしているが、現在選択が可能なのは「C43」などにも搭載される2Lの直列4気筒ターボエンジンを搭載する「SL43」のみ。それでも1780kgの車重に対して、最高出力は381ps、最大トルクは480Nmというスペックを持ち、それに9速ATを組み合わせるのだから、その加速は見た目の大きさよりもはるかに魅力的な軽快感を生み出してくれた。
とりわけ印象的だったのはやはりコーナリング時のノーズの軽さ。20インチ径のタイヤを装着するにもかかわらず、つねにフラットな乗り心地を感じさせてくれたことも忘れられない。
その印象は、はたしてSL63 4MATIC+になるとどのように変化するのか。試乗の地はアメリカのカリフォルニア。ルート上の路面状況は日本よりわずかに悪く、しかしながらハイウェイの流れはかつてのそれよりも確実に速くなった。それはNASAでお馴染みのパサデナの街に程近いワインディングロードでも似たような状況だった。
V8ツインターボは最高出力585馬力、最高速は315キロ
縦ルーバーが並ぶパナメリカーナ・グリルを採用し、その左右に大型のエアインテークとシャープなヘッドライトを配置するSL63 4MATIC+のエクステリアは、前作と比較してじつにスポーティなものになった。見た目には意外とコンパクトに見えるが、実際にはボディサイズは若干拡大され、それによってキャビンには先々代以来の後席を備えることが可能になった。実際にはそのスペースは積極的にパッセンジャーを迎えるというよりも、ラゲッジスペースや緊急用と表現した方が正しい大きさだが、ともあれ実用性が向上したことは確かである。
そしてこの新型SLシリーズにはもうひとつ大きな話題がある。それは先代、先々代と使用されてきたリトラクタブル・ハードトップ(バリオルーフ)が廃止され、ふたたびルーフにソフトトップが採用されたこと。車速が60km/h以下であれば15秒ほどで開閉が可能というこのソフトトップは、もちろん軽量かつ高い耐候性が与えられていることは確かだ。
フロントに搭載される4LのV型8気筒ツインターボエンジン、いわゆる「ホットインサイドV」レイアウトのパワーユニットは、このSL63 4MATIC+の心臓部だ。最高出力は585ps、最大トルクは800Nmに達し、これにメルセデスAMG独自の9速AMGスピードシフトMCT 9Gを組み合わせる。駆動方式はSLとしては初となる4MATIC+のAMGパフォーマンス仕様。常時4輪から最適なトラクションが路面に伝わることによって、0-100km/h加速は3.6秒、最高速は315km/hを達成する。