800Nmの極太トルクがひたすら持続する
実際に最新のメルセデスAMG SL63 4MATIC+をドライブしてまず驚かされたのは、やはりV型8気筒ツインターボエンジンが発揮するトルクの厚みだ。ホットインサイドVのV型8気筒エンジンは、これまでにもAMGモデルには多数搭載されてきたが、今回のSL用ではさらにインタークーラーのレイアウトを変更したほか吸排気システムの最適化、触媒コンバーターボックスとガソリンパティキュレートフィルターへの排気ガス流入量の増加などが行われている。
それによって中低速域のトルク感はより一層の厚みが感じられるようになり、フルスロットルでの加速では、最大トルクが2500~5000rpmまでフラットに発揮されるというセッティングもあり、じつに息の長い加速フィールを感じることが可能になっているのだ。そしてその鋭い加速感は独特なエンジンサウンドとともに、レブリミットまで衰えることなく続くのである。
AMG初採用の5リンクサスで軽快な乗り心地を実現
コーナリングでの動きも、想像以上に軽快なものだった。ボディやサスペンションの剛性感には一切の不満はなかったが、これは量産されたメルセデスAMG車としては初となる、リム内に完全に配置された5本のコントロールアームを備えたマルチリンクのフロントサスペンション、リアも同様に5本のコントロールアームによるマルチリンクサスペンションという5リンク設計がホイールを確実に制御していること。
そしてこのSL63 4MATIC+ではアクティブな油圧ロールスタビライザーを備えた、革新的なAMGアダプティブライドコントロールサスペンションが、精度の高い運動特性と同時に快適な乗り心地を実現していることに大きな理由がある。
* * *
まずはSL43でスタートした日本仕様の新型SLだが、将来的にはSL55 4MATIC+、そしてSL63がラインナップに加わることは、メルセデスAMG、そしてメルセデス・ベンツのファンにとっては大いに期待するところだろう。
SLの伝統を継承しつつ、ドラスティックに生まれかわったSL63 4MATIC+。数えて7世代目となるSLの8気筒モデルは、もしかすると純粋にICE(内燃機関)の魅力を堪能できる、最後のモデルとなるのかもしれない。