犬の乗り降りのしやすさとアイテムの充実度で考えると……
Mクラスボックス型ミニバンは、ドッグフレンドリーカーの最有力候補である。しかし、ミニバンであってもドッグフレンドリーであるには、乗降性やシートの高さが肝となってくる。ここではホンダ ステップワゴンと日産セレナを比較し、どちらが最もドッグフレンドリーなのかについて解説しよう。
ワンコを乗せるならロールサンシェードが付いていることが望ましい
まず、どうしてMクラスボックス型ミニバンが愛犬を乗せるのに適しているのか、その理由を解説しよう。
愛犬は飼い主の目が届きやすく、飼い主と愛犬がアイコンタクトしやすい後席に乗せるのが安全・快適性において基本となる。飼い主の乗車人数によって、ミニバンは愛犬を2列目席、3列目席に乗せられる自由度が高いことがあげられる。さらに2列目席のサイドウインドウに、犬の熱中症対策となる直射日光を和らげ、犬が嫌がる外からの干渉を防いでくれるロールサンシェードが付いていることが望ましい。またミニバンには、2/3列目席頭上にエアコン吹き出し口があり、これも犬の命にかかわる熱中症対策になりうる。
もちろん、乗降性もスライドドアならば快適そのもの。ステップが低ければ、大中型犬はもちろん、小型犬でも自ら乗降しやすいというわけだ。ちなみに、3列目席を格納して、拡大したラゲッジスペースにクレートを固定して大型犬を乗せるような使い方では、飼い主、愛犬の負担を考えると、ラゲッジフロアの低さがポイントとなる。
さて、ここではモータージャーナリストにしてドッグライフプロデューサーであり、輸入車メーカーの愛犬用アクセサリーのプロデュースも行う、犬との暮らし歴30年余の筆者が解説したい。
スライドドアからの犬の乗降性はセレナが有利
まずはスライドドアからの犬の乗降性だ。ホンダ ステップワゴンはホンダならではの低床パッケージによって、スライドドア開口部のステップ地上高は390mmと低く、フロアとの段差なし。小型犬でも無理なく乗り降りできる高さにフロアがある。
このクラスでもっとも新しい日産セレナはある意味、先代のビッグチェンジ的な基本部分とパッケージを持つ。よって、スライドドア開口部のステップ部分も基本的に先代と変わらず。つまり、1段目のステップ高が390mmは不変。だが、そこから1段高いフロアまでの地上高は先代の450mmから485mmに高まってしまっている(段差は先代70mm、新型95mm)。
とはいえ、1段目のステップの高さはステップワゴン同様なので、階段になれた犬であれば、乗降性はそれほど悪くない。むしろ、セダンタイプのように、ステップからフロアが下がっているほうが足を引っかけやすく、危ないのである。
最新のステップワゴンとセレナの場合、2列目席キャプテンシートでも、中寄せスライドによってベンチシート化できる点がドッグフレンドリーポイントとなる。キャプテンシート状態よりもキャリーケースやドッグベッドがより装着しやすいのがその理由だ。ちなみに最新のノア&ヴォクシーは、先代までのキャプテンシートでも中寄せスライドができる方式から、できない方式に変わってしまった……。
2列目席は愛犬の特等席になりうるのだが、そのためにベンチシートを選ぶというのも、ちょっともったいない(ステップワゴンの場合)。そこで、2列目席がキャプテン、ベンチ自在のステップワゴンとセレナのベンチシート化したときのシートクッション長、シート幅もまた犬の乗せやすさのポイントとなる。
シートクッション長と総幅はステップワゴンが510mm、1030mm、セレナは480mm、1230mm。つまり、シートクッション長ではステップワゴンが、総幅ではセレナが有利ということになる。また、犬が自身で2列目席フロアからシートに乗り降りする際のポイントとなるフロアからシートクッション先端までの高さは、ステップワゴンが340mm、セレナが350mmとほぼ同じである。どちらも、小型犬でもジャンプ力のある犬なら問題なく乗り降りできる高さと言っていい。