海外でも注目されるDOHCエンジンを搭載した1台
トヨタのカローラレビン/スプリンタートレノといえば、AE86を思い浮かべる人がいまは多いかもしれない。だが、1970年代に青春時代を過ごした私には、レビン/トレノといえば、TE27しかありえないのである。あらためて同社の魅力を振り返ってみよう。
市販量産車でありながらオーバーフェンダーを装備
レビン/トレノは、1972年に発売された。その2年前に、セリカが誕生している。セリカGTやGTVに搭載されていた、1.6リッターの直列4気筒DOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)エンジン「2T-G」を、大衆車であるカローラ/スプリンターに搭載したのが、レビン/トレノである。そして、なんといっても目を引いたのが、市販量産車でありながらオーバーフェンダーを装備した凄みのある外観だった。
オーバーフェンダーは、ツーリングカーレースで活躍するクルマが、幅の広いレーシングタイヤを装着するため特別に取り付ける外装部品であり、のちに、ブリスターフェンダーなども現れるが、当時は、オーバーフェンダーであることが高性能の証といえる時代であった。それを、公道を走ることのできる市販車に装着したところに、レビン/トレノの最大の価値があったといっても過言ではない。
趣味性を分ける存在だった3台
当時、セリカは洒落たスペシャリティカーの位置づけで、見栄えは上品で、存在感が際立っていた。それまでのクルマにない価値をもたらす新鮮さが素晴らしかった。そのセリカにも、高性能車として2T-Gエンジンを搭載したGTやGTVがあったが、レビン/トレノは、大衆車に追加された高性能車という新たな価値を与えられた硬派な一台であり、セリカかレビン/トレノか、どちらを選ぶかによってその人の趣味性を分ける存在でもあった。
しかし私は、どちらも捨てがたい存在だった。両方手に入れたい、そんな思いに駆り立てられた。
2T-Gは音でも聞かせる銘エンジンだった
2T-Gエンジンは、直列4気筒のパンチ力を体感させる出力特性だけでなく、音でも聞かせる銘エンジンといえる一つで、その高性能さは、F3で世界的に主流となることからも伺える。欧州のF3シリーズで、それまでのフォード製からトヨタ製へ一変してしまうのである。それほど海外でも注目されるDOHCエンジンだった。
国内のノーマルカーレースでも、敵なしの強さでクラス優勝を手にしていた。それほど、他に類を見ない存在でもあったのだ。
後輪のサスペンションは、リーフスプリングを使うリジッドアクスルだったが、それは当時としては当たり前の形式であり、一方、セリカはコイルスプリングを使っていたが、形式で優劣を語る意味はない。それをうまく仕立て、操れるようになることこそ、クルマ好きの誉となる時代だ。
当時、ツーリングカーレースを席巻したB110サニークーペも、リーフスプリングのリジッドアクスルだったのである。しかもエンジンは、プッシュロッドを持つOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)であった。それでも同じクラスでサニークーペに叶う車種はいなかったのである。
TE27のレビン/トレノは、いまでも思い出すと心躍り胸が熱くなるクルマであり、2T-Gの腹に響く排気音さえ蘇る。