扱いやすさがクラシックラリーでは有利になる
クラシックカーラリーの取材に行くと、頻繁に見かける往年のスポーツカーがある。そのクルマとはポルシェ「356」だ。水平対向のリアエンジンと聞くと、いろいろと操作がシビアなのではと考えてしまうが、じつはそうではないようだ。今回は、その理由を解説していこう。
そもそもクラシックカーラリーとは
クラシックカーラリーのことをあまり知らない人のためにあらためて説明すると、旧車によるラリーでは助手席に座ったコ・ドライバーがルートマップ(主催者が製作したコマ地図)を見て、そこに記された道を正確に走ってドライバーと一緒に指定された地点を巡っている。
ルート上にはスタンプポイントと、決められた区間を設定された時間でいかに正確に走行することができるか? を競う「PC(Prove Cronometrate:イタリア語でタイムトライアルの意)競技」が用意されている。ラリーによっては指定された時刻に計測ラインを前輪で踏みながら通過し、その誤差を競うCO競技や、主催者が設定した速度で走行するアベレージ走行競技なども実施されている。
2022年11月24日~27日の日程で開催された「クラシックジャパンラリー2022 門司」は、4日間で約1000kmを走破。60本のPC競技(計測は路面に設置されたスタートラインを前輪が通過した瞬間に開始され、コ・ドライバーが秒数をカウントしながらゴールラインを目指している)をするという内容であった。
ポルシェ356とは
今回紹介するポルシェ356とは、1948~1965年まで生産されたドイツのスポーツカーの名称で、自動車史に残る傑作車を多数生み出した設計者であるフェルディナント・ポルシェ博士(フォルクスワーゲン タイプ1=ビートルも設計)の名を初めて冠したクルマとして知られている。全部で7万9000台以上がデリバリーされたといわれており、いまでもポルシェを代表するクルマであり続けている911シリーズが356の後継モデルだ。
1950年から生産されたモデルはプリAと呼ばれ、1956年にプリAの後継モデルとして全方位的に進化を遂げた356 Aが登場。356 A以降、ハイパフォーマンススポーツモデルに“カレラ”の名称が与えられるようになった。
1960年には、356 Aの後継モデルである356 Bがリリースされ、ボディの各部が変更された。エクステリアの大きな特徴のひとつが大型化されたリムガード付きのフロントバンパーで、356 Bでは先代モデルと比べて約10cm高く設定。同時にヘッドライトも、より高い位置に取り付けられた。1964年に356 Cが登場し、ディスクブレーキが標準装備となったが、外観上ではBシリーズとCシリーズに大きな違いはない。
人気の理由は乗りやすさにあった
ポルシェ356が何ゆえにクラシックカーラリーでも人気なのかというと、車体のリアエンドに搭載された空冷水平対向4気筒OHVエンジンが恐ろしく丈夫で扱いやすく、なおかつ、速いからである。まさに三拍子揃ったスポーツカーなので、クラシックカーラリー参戦時に活用する自動車趣味人がたくさんいるのだ。
実際に空冷ポルシェ911も愛用している356オーナーによると、
ポルシェ356は初心者にも優しいラリー向きのマシン
また、ポルシェ356は長距離を走行しても壊れにくく、空冷水平対向4気筒OHVエンジンは低回転域からトルクが発生するため、発進直後のコースが上り坂になっていることがあるPC競技で有利なのである。さらに、高速道路での移動が楽という美点もある(もちろん、法定速度内で走行するが余力があるので走りやすい)。
PC競技ではコ・
ポルシェ356の場合、運転操作がしやすく、パワー&トルクやギヤ比が絶妙なため、一定の速度でスムーズに走行することが可能だ。つまり、コ・
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現在では価格が高騰してしまい、