展示されたのはまさかの左ハンドル仕様!
「大阪オートメッセ(OAM)2023」に展示されていた、オリジナルレッドでペイントされたトヨタ「ハイエース」。それも4型フェイスながら実車は平成17年式の1型がベースという個体だった。DX用の透明な素ガラスに変更され室内の様子も確認しやすかったため覗いてみると、なんだか違和感が……。よく見ればこのハイエース、左ハンドルではないか! 製作した真鍋モータースのこだわりとは。
逆輸入は現実的ではないとわかり製作を決意
当初は左ハンドルのハイエースを逆輸入しようとしたとのこと。だが、輸入コストを考えると「作った方が安い」というのが製作に至った大きな理由のひとつだ。では、その左ハンドル化への製作工程を紹介しよう。
まずフロントのインパネを写真撮影し、デフロスターを基準に写真を反転させ大まかなイメージを把握。そして10カ所以上も切った張ったを繰り返し成形していく。右ハンドル用の純正パーツをバラして繋ぎ直し、左ハンドル用に作り直しているのだが、その作業工程はまさに気の遠くなるような作業だ。ちなみに左ハンドル化に要する作業日数は約半年程度とか。
ウインカーレバーやペダル位置もきちんと左ハンドル仕様にアレンジ
細かく気配りされていると感動したのが、運転席の拭き取り面積をきちんと確保するためワイパーの取り付けも逆レイアウトに変更している点。さらにドアミラーも土台の中のギヤを改造し、運転時に見やすいように基本角度を変更している。ウインカーレバーは左側、ワイパーレバーは右と、レバー位置も輸入車感を味わえる逆レイアウトにバッチリ変更済みだ。これほど凝ったレイアウトにしたため、逆輸入車のハイエースと間違われることもあるそうだ。
ちなみにペダル位置は、左ハンドル仕様で違和感がないよう当然ながら調整して移設。パワーウインドウのスイッチ類も左ドアに移設済みだ。純正然としているがために気が付きにくいが、左ハンドル化でクリアしないといけない数々の課題をことごとくクリアしている。これなら左ハンドル車に乗ったことのある人も、違和感なく乗りこなせることだろう。
もちろん公認車検取得済みで安心して乗れる
安全第一を考慮し、純正基準に則った左ハンドル化の構造変更作業を実施している。できるだけ純正部品を使用し、国内仕様車をベースに操縦装置位置変更、ダッシュボードの安全実証実験をクリアしているため、左ハンドル化の公認車検も取得済みだ。
ちなみに展示されていたこちらの車両は、通常8名乗車+車椅子2名の計10名乗車での福祉車両登録になっているそうだ。
左ハンドルという視覚的インパクトは当然のことながら、歩道からすぐに運転席へ乗り込めるため、短時間の乗り降りが多い配送業の仕事にも意外と向いているという。事実、このハイエース以外にもスズキ「エブリイバン」やトヨタ「タウンエーストラック」の左ハンドル仕様を、依頼を受けて製作しているとのこと。
タウンエーストラックのオーナーは街路樹の手入れをしている業者の方で、ひとりでクルマを移動しつつ剪定作業を行えるから、という理由でのオーダーだそうだ。クルマにそれほど興味のない人には、この仕様の凄さにまず気づかれないと真鍋代表は笑うが、その製作工程の手間暇から考えると、製作コストも「趣味が高じて……」でなければまず無理そうな、なかなかのバーゲンプライスだった。
2列目、3列目のシートも変更されており、こちらはC24型日産「セレナ」用を流用。そこにクラッツィオのオーダーシートカバーをセットしている。ホイールも、通常のハイエースカスタムではあまり見かけない仕様で、聞けばトヨタ「ハイラックス」の純正17インチスチールホイール(17×7.5+30)に、トヨタ「カローラ クロス」のホイールキャップを組み合わせたものとか。
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普通の見せ方では満足しない真鍋モータースの「変態っぷり」はスゴイのひと言に尽きる。ほかの誰もチャレンジしないようなハイエースに施された超絶カスタムの数々、本当にお見事としかいいようがない。