じつは想像以上に多い、日本未導入のフォルクスワーゲン車
フォルクスワーゲンは早い時期からグローバル展開を進めていたメーカーです。そのため、欧州だけでなく、北米や中南米、南アフリカや東南アジアなど、地域ごとに多彩なモデルをラインナップしていました。今回は、日本でもなじみ深い「ゴルフ」のピックアップトラック「キャディ」を紹介します。
「ゴルフ」の名のルーツは風? スポーツ? いまだ論争は決着せず
フォルクスワーゲンの車名の多くが、風に由来していることは有名だ。「パサート」は貿易風を意味するドイツ語(起源はラテン語)、その姉妹車「サンタナ」はアメリカ~メキシコの秋の季節風(Santa-Ana winds)のことだし、「シロッコ」はイタリア語で南東から吹く熱風のことだ。続けて登場した「ゴルフ」だって、じつはスポーツではなく、ガルフストリーム(ドイツ語でGolfstrom)に由来すると言われている。
しかし、ガルフストリームはメキシコ湾流のことで風とは関係なし。ガルフだけなら「湾」(ドイツ語でGolf)のこと。ゴルフの後には「ポロ」と「ダービィ」という紳士的スポーツが由来の車名が登場しているし、ゴルフボール型のシフトノブもあるので、ますますゴルフはスポーツのゴルフ説が強まっている。だから、
「ゴルフの車名の由来は?」
「スポーツでしょ」
「ブッブッ~」
というトリビアクイズも近年はまた要検証になっているというわけだ。
ゴルフの相棒? それならキャディさんでしょ!
さて、そんなVWゴルフにピックアップトラックが存在していたことを知っているだろうか。その名も「キャディ」。洒落ているでしょう!
キャディとは、ゴルフプレイヤーのゴルフバッグを持って一緒にコースを回っている人のこと。荷物を積めるゴルフをキャディとネーミングしたセンスは抜群だ。しかもキャディはゴルファーの荷物持ちというだけでなく、コース案内やクラブの選び方をアドバイスする勝利のための道先案内人でもあるのだ。
北米で生まれたときは「ラビット・ピックアップトラック」
そんなゴルフのトラックが登場したのは1979年のことだった。FF方式のままホイールベースを延長し、リアサスペンションはリーフ式に変更された。当初はアメリカ市場向けで、生産もアメリカのペンシルベニア州ウェストモアランド工場で行われた。そのため、厳密にはゴルフの北米仕様であるアメリカ現地生産「ラビット」がベースと言うのが正しい。角型ヘッドライトに大型のバンパーが特徴だ。なお、米国内での車名はキャディではなくピックアップだった。
1983年には製造ラインをユーゴスラビア(現ボスニア)に移し、ヨーロッパでの販売が開始された。このときにキャディの名前が付けられたのである。また南アフリカでもノックダウン生産された。
現行型はミニバンタイプの商用車
そして現在発売中のキャディは2020年にフルモデルチェンジした4代目で、3代目以降はピックアップは廃止されてミニバンタイプの商用車になっている。日本にはごく少数が並行輸入されているのみだが、福祉車両バージョンなど、はたらくクルマとしてのポテンシャルを活かしたクルマもあるようだ。