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ジープ初市販BEV「アヴェンジャー」はなぜ欧州で生産? 北米での販売はなくとも日本導入してほしい1台とは

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TEXT: 南陽一浩(NANYO Kazuhiro)  PHOTO: 南陽一浩/STELLANTIS

日本導入も? “欧州テイスト” の本格4×4

ちなみにアヴェンジャーが用いるプラットフォームは「STLAスモール」で、同ミドルと同ラージと併せてステランティス・グループ肝煎りのEV専用プラットフォームといわれる。ただし元を辿れば、プジョー2008やシトロエンë-C4にも用いられてきたe-CMPの第2世代で、アメリカ合衆国での型式認証を前提としない旧PSA出自のプラットフォームといえる。兄弟車か? といえば、FWDである前2車に対し、アヴェンジャーは前後車軸をモーター駆動化、つまり4WD化したことが大きな進化ポイントだ。

それでもアヴェンジャーは本格4×4として、最低地上高は200mmとBセグSUVで最高レベルを誇り、アプローチアングルとランプブレークアングルはともに20度、デパーチャーアングルは32度となる。しかも欧州でも世界的にも人気の高いレネゲードより、全長は約16cm短い4.08mというコンパクトさだ。近頃のジープらしいモダンなアプローチのデザインだが、バンパーとウレタンのガードは欧州で事故の70%を占めるという低速域での事故でのダメージを軽減するため、ボディ全周を高めに覆っており、ライト類も少し奥まって搭載されているという。

荷室容量は5名乗車時でも380リッターを確保したのは、さすが欧州好みの実用性重視ポイントといえるが、内装はかなり簡素。ただ、シートの素材やごくシンプルな造りは欧州車のエントリーグレードを彷彿させる雰囲気とはいえ、Uconnectと名づけられたインフォテイメントシステムは最新鋭だ。10.25インチのタッチスクリーンを装備してApple CarPlayもAndoroid Autoにも対応するけでなく、OTA、つまりオーバー・ジ・エアの機能アップデートにも対応するという。

レネゲードよりもコンパクト、でもシステムは最新鋭

ところで肝心のパワートレインだが、EV専用のプラットフォーム同様に第2世代の400Vシステムを採用している。このシステム自体が初出で、フランスはEmotors(イーモータース)社が供給する。同社はステランティスと、ニデック・ルロワ・ソメールこと日本電産のフランス拠点が、50:50で出資しているジョイントベンチャーだ。

ステランティスが内製と謳うバッテリーは容量54kWhで、17モジュールを102セルで構成させるリチウムイオンNMC811、つまりコバルトの使用量を控えつつもエネルギー密度を上げた、最新世代のひとつといえる。トルクは260Nmで出力は115kW(156ps)と、必要十分。

航続距離はWLTPのミックスモードで400kmを謳っているが、むしろ市街地モードなら550kmにまでレンジは伸びる。この辺りはジープ自慢のセレクテレイン・システムで、路面に対し駆動力を最適化する4×4とはいえ、6モードのうちに街乗り重視の「エコ」をも備えている辺りに、プジョー・シトロエンやフィアットの純・欧州車的な実用燃費(電費)のノウハウが活きているといえるだろう。いずれにせよBEVからスタートとはいえ、急速充電がCHAdeMO対応であれば当然、日本の型式認証にも対応できるだろうし、導入への期待は膨らむ。

とはいえ、昨今のステランティス的「パワー・オブ・チョイス」という、パワートレイン選択肢の自由を顧客に任せるポリシー上あるいは営業上、早々にエネルギーミックス化、つまりICE版も登場するのではないか。フランス車と兄弟のFFのジープ!? になるのか、あるいはジープの4×4文化リスペクトで何とかリアモーター4WDにするのか。いずれ日本市場なら、ジープ・ルックに1.5リッターのディーゼルでプジョー車でおなじみの路面状況に応じたドライブセレクタ、「アドバンストグリップコントロール」が付いていたら、十分ヒットしそうな気がする。

軽油でキビキビ走ってオフもけっこう行けるオンロード寄りのジープだなんて、遊びの妄想も膨らむはず。非アメリカンなジープがどんな方向性を究めてくるか、要注目だ。

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