ガソリンターボの進化に感動
ルノー カングーがおよそ14年ぶりにフルモデルチェンジを行い、ついに日本に上陸した。日本でも多くのファンを持つフランスの超実用車だ。ルノー・ジャポンが主催するカングージャンボリーというオーナーイベントに多くのカングーが集まることからも、根強い人気を保ち続けていることがわかる。今回はガソリンターボとディーゼルターボを比較してみた。
現時点ではMTの設定はなし
まずはガソリンターボモデルだが、パワーユニットは、定評あるルーテシアなどにも積まれる1.3L直4 16バルブ直噴ガソリンターボエンジンを新搭載。スペックは131ps/5000rpm、24.5kgm/1600rpm。車両重量は1560kgでWLTCモードは15.3km/Lとなる。
一方、ディーゼルターボモデルのパワーユニットは、基本的には先代最後のリミテッドモデルに搭載されたものが基本で、コモンレール式1.5L直4直噴ディーゼルターボエンジン、116ps/3750rpm、27.5kgm/1750rpm。車重1650kgでWLTCモードは17.3km/Lを誇っている。
ともに組み合わせるトランスミッションは2ペダルのセミAT、7速EDCとなる。なお、先代ディーゼルターボモデルにあったMTは現時点では用意されていない。
ガソリン/ディーゼルの価格差は24万円
グレードは新型ならではのボディ同色バンパー&アウタードアハンドル、そしてダブルバックドアを備えたINTENS、これまでのカングーらしさを引き継いだ、日本仕様専用となるブラックバンパー×ダブルバックドアのCREATIFが基本。ベースグレードのZENは受注生産となる。
価格については、INTENSグレードを例に挙げると(装備的に同じ)、ガソリンターボが395万円、ディーゼルターボは419万円と、ディーゼルターボモデルのほうが24万円高。装備、先進運転支援機能、タイヤサイズなどほとんどが同一のため、エンジン分が24万円の差となるわけだ。
ここで、先代モデルのガソリン車とディーゼル車の比較を思い出せば、先代最後に加わったディーゼルターボモデルはガソリン車に比べて圧倒的にトルキーに走り、MTとの組み合わせもあって(EDCはなし)、日本においてはマニアックな仕様となった。最終リミテッドモデルということもありカングーマニアに大ウケ。足の長さからロングツアラーとしての資質も高かったのである。
静粛性はカングー史上最高レベルのガソリンモデル
では新型の場合、ガソリンターボとディーゼルターボモデルを走らせるとどうだろう。筆者の個人的な印象では、当たり前だがカングーとして新エンジンを積んだガソリンターボモデルが好印象。先代モデルとの走りの進化がより著しいからだ。
具体的には比較的クイックになったステアリングのスムーズさ、乗り心地を犠牲にせずロールを抑えた左右の姿勢変化の少なさ、カーブや山道で4輪のタイヤが路面に張り付くような安定感の高さ……。といったところはパワーユニットを問わないが、ガソリンターボモデルはさらに走り出しの滑るようにスムーズな加速感、軽々としたアクセルペダルもあって右足の踏み加減によって自在にスピードコントロールできる柔軟かつ速度を高めるほど活発になり、気持ち良さを増す動力性能を持ち合わせていた。
そして何と言ってもルーテシアでも感動したエンジン回転フィールの気持ち良さが、ついにカングーでも味わえるようになった点に感動しきりなのである。もちろん、静粛性もカングー史上最高レベルにあると言っていい。
しかも、カーブや山道での走行性能は鼻先の軽さが功を奏し、スッとノーズがインを向き、キビキビと走るファンと言っていい操縦性が光るのだ。
エンジンを中高回転まで回すシーンでは頼もしいトルクを発揮する
一方、ディーゼルターボモデルは、先代よりもトルクアップしたとは言うものの、走り出しのトルク感はそうも感じにくく、動力性能とアクセルペダルの反応ともに極めて穏やかな印象だ。つまり、出足からモリモリと沸き上がるようなトルク感は持ち合わせていないということだ。
ほぼ同パワーユニットの先代モデルより車重が130kgも重くなったこともその一因だろうし、新型同士でガソリンターボモデルと比較しても90kg重く、最大トルクも3.0kgmの上乗せにとどまるからだ。もっとも、登坂路などでエンジンを中高回転まで回すシーンでは頼もしいトルクを発揮してくれる。
また、静粛性にもこだわった新型だが、ディーゼルターボエンジンのノイズ、振動はやはりそれなりに届き、車内の静かさではガソリンターボが上。飛ばしたときの操縦性にしても、ガソリンターボモデルのような鼻先の軽さ、軽快さが感じられないのも事実なのである。
もちろん、WLTCモード燃費ではディーゼルターボのほうが12%ほどよく、燃料がガソリンより安い軽油となるため、足の長さや燃料代にこだわるのであれば、ディーゼルターボモデルの選択はアリ。動的質感で先代モデルのような穏やかでおっとりした感覚を望むユーザーにとっては、こちらが向いているとも言える。
結論:ガソリンモデルは国産同種のクルマとは別次元の走りの楽しさ
しかし、根っからのカングーファンではない、新規のユーザーにとっては(価格の高騰もあって300-400万円級の国産Mクラスミニバン、輸入コンパクトカーなどからの流入があるはず)、くどいようだがルーテシアでも発揮される1.3Lガソリンターボエンジンの気持ち良さと静かさ、ドライブフィールは極めて現代的であるため、とくに国産同種のクルマとは別次元の走りの楽しさ、所有する満足感、使い勝手が得られるに違いない。
先代カングーのガソリンモデルからの乗り換えだとしても、新型のガソリンターボモデルは、こと走りに関しては、想像以上の出来栄えだと感じるはずである。購入時にはぜひ両モデルを乗り比べて、価格差、ランニングコスト差、ドライブフィールの好みなどを吟味して選択していただきたい。
なお、このあと新型カングーのアウトドア適性度、愛犬家と愛犬にとっての適性度についても報告したい。