レースだけでなくタイムアタックシーンにも参入し鍛える
「大阪オートメッセ(OAM)2023」のCLUB RH9合同ブースに、メーカー特別参加枠として出展したエアロパーツメーカー「ings」。これは同社がエアロパーツ開発において、スーパー耐久レースからのフィードバックだけでなく、タイムアタックシーンで自社でも速いチューンドカーを走らせて、開発スピードを上げたいという思いから、近年CLUB RH9の走行会などを積極的に活用。その流れから、今回のブース出展の実現に至ったようだ。
スーパー耐久レース2022に参戦するGR86の4台中3台がings製を採用
大阪オートメッセ(OAM)2023には最新のN-SPECエアロをまとったトヨタ「GR86」と、レースの現場からのフィードバックでさらなる改良を加えたN-SPEC R仕様のA91型トヨタ「GRスープラ」の2台を持ち込んだ。
ちなみにN-SPECはビジュアルと機能を兼ね備えたストリートバージョンで、N-SPEC Rがスーパー耐久レース公認エアロパーツとして実戦投入するコンペティションモデルと区別されている。その違いはフロントまわりのみで、そのほかは共通だ。また、スーパー耐久レースでは9台のマシンが同社のエアロパーツを装着。2022年シーズン、86は参戦4台中3台がings製と、高い支持率を誇っているのは性能と信頼の証だろう。
N-SPECのGR86(BRZも共通)は、ボンネット/ダクト付きのフロントフェンダー/サイドステップ/リアバンパー/GTウイング(Z-Power WING)と見どころ満載だが、オーナーの視線を奪うのはノーマルのイメージをガラリと変えるフロントバンパーだろう。
性能を盛り込みながら複雑な造形をまとめ上げたGR86用エアロ
現段階では数少ないフルバンパーで、左右にグッと張り出し、大きな開口(ダクト)を設けることで、ハーフサイズでは演出できない迫力あるビジュアルを構築。中央部はラジエター幅の位置にスリットを設け、確実に空気を導き入れるとともに、スリットの下側をやや前方に出した、F1の吊り下げ式を彷彿させるフロントウイング形状とすることで、より立体感を強調したフォルムに仕上がっている。
また、リップは保安基準対応の出幅30mmの範囲で最大限の効果が得られるようデザインし、両サイドはカナード形状にする王道スタイルをプラス。加えて、ヘッドライト下は水平方向に、グリル中央部上にはボンネットからつながるようにキャラクターラインを施して、フェイスにさらなるアクセントを添えるなど、これでもか、というほど多彩な要素を加えている。
この手法はうまく処理できなければうるさく見えてしまうのだが、絶妙のさじ加減でキャラクターとして成立させている。ingsの実力が垣間見える部分だ。
A91GRスープラ用はレースからのフィードバックでアップデート!
ちなみにスーパー耐久レースに採用されるN-SPEC RのGR86用フロントバンパーは中央上部にエンジン内へ空気を取り入れるダクトを設け、N-SPECの両サイドのダクトをなくし、最新の日産R35「GT-R」のように空気を後方へ積極的に流すデザインとなっている。
N-SPEC RのA91GRスープラ用は前後バンパー/フロントエアロフェンダー/サイドステップ/GTウイング(Z-Power WING)/アンダーパネルの6点の構成。2022年のスーパー耐久レースを戦ったトレーシースポーツから、「ダウンフォースが少し足りない」とフィードバックがあったことで、フロントバンパー形状を見直したアップデート仕様だ。
基本デザインは変更していないが、バンパーの上下方向を拡大し、路面とのクリアランスを詰めて対処。ちなみにフロントバンパーに取り付け強度確保のためのワイヤーブラケットを装着しているのが、N-SPECとN-SPEC Rの識別点でもある。
タイヤハウスの乱流を抜くフロントフェンダーのダクトも美しく造形され、フロント側面からデザインの連動性を感じるサイドステップは張り出し量も大きく、ボディサイドだけでなく、下面もしっかり整流。リアは左右の整流板で側面の空気の流れを整え、センターをディフューザー形状とすることで、下面の空気を後方へスムースに排出する。ダウンフォース効果も得るなど、性能とビジュアルをともに引き上げている。
風洞実験も行い実際に効果があるのか実証済み
また、これらの性能についてはレース、タイムアタックでの実戦から得たノウハウを生かし、風洞実験を通して効果は実証済み。本当に効果のある機能商品なのがingsエアロパーツの売りであり、真骨頂なのだ。
「ただ、最近の純正バンパーは迫力のあるデザインが多く、それに負けないようにデザインするのもエアロメーカーとしては大事なポイント。性能とビジュアルの両立はなかなか難しいですね」とingsスタッフは笑う。
GR86は今後タイムアタックマシンに仕上げてシェイクダウンする予定。その後、全国のサーキットでタイムアタックを繰り返し、狙い通りの性能が出ているか検証していくとのこと。こうしたトライ&エラーを惜しまずに行うことでしか、本物は生まれない。機能美を追い求め続けるingsの次なる一手に期待したい!