最新「トナーレ」のデザインは「SZ」が源流
先日、アルファ ロメオ初となるマイルドハイブリッドを搭載した「トナーレ」が日本に上陸したばかりだが、そのフロントマスクのデザインは、1980年代後半に販売されていた「SZ」がモチーフとなっていた。このSZというクルマの生い立ちと、現在のオークションマーケットでの価格を調査してみた。
買収されたフィアットの起死回生として開発
アルファ ロメオは長い歴史を持つ自動車メーカーである。モータースポーツにも古くから参戦していて、数多くの栄冠を手にしてきた。エンツォ・フェラーリが若き日にアルファ ロメオのドライバーであったことも有名だ。
しかしアルファ ロメオの自動車メーカーとしての歩みは順調なものではなかった。とくに1980年代は経営が苦しく、ブランドを残すためにアルファ ロメオは1986年、フィアットに買収されることになった。
その結果、それまで独自の開発をおこなっていたアルファ ロメオは、コストカットのためにフィアットのプラットホームやエンジンをベースとしたモデル開発をおこなうようになり、アルファ「155」や大ヒットしたアルファ「156」はFFレイアウトを採用。FRレイアウト、アルファ ロメオ独自開発のモデルの最後は、買収前の1985年に発売された「アルファ75」と、長くモデルチェンジをおこなわなかった「スパイダー・ヴェローチェ」である。
1986年、アルファ ロメオを買収したフィアットは、アルファ ロメオというブランドを建て直すためには大衆の想像力をかき立てるモデルが必要と考えた。そこから生まれたのが、1989年のジュネーブ国際モーターショーで発表された「ES-30」というコンセプトモデルである。
デザインと製作を担当したのは、カロッツェリアであるザガート。このコンセプトモデルはデザインスタディで、ドライブトレインは搭載されていなかったのだが反響は大きく、同年アルファ ロメオは「SZ」を発売する。このSZとはSprint Zagatoを表すものだ。
SZのベースとなっているのは、アルファ75のプラットホームである。つまりレイアウトはFR。ただ、プラットホームは同じだがサスペンションは75のグループA仕様車をベースにチューニングし、油圧を利用して約40mmの車高調整が可能なものが採用された。
エクステリアデザインは過去にシトロエン「SM」をデザインし、当時はフィアットデザインセンターに所属していたロベール・オプロンが担当。インテリアデザインとエクステリア細部の仕上げは、やはりフィアットデザインセンターのアントニオ・カステラーナが担当し、製作はザガートが受け持っている。