1036台のみ生産
搭載されているエンジンは、75にも採用されていた3L SOHCV6を、190psから210psへとパワーアップしたもの。このシングルカム2バルブのV6エンジンは、156などに搭載されているDOHC4バルブエンジンよりも官能的なサウンドを奏でるものであったと記憶している。独特の「怪物」と揶揄されたボディパネルは、樹脂製である。生産台数は2年間の製造期間で1036台といわれている。
その成り立ちや当時のアルファ ロメオ、というよりもイタリア車全般の品質から、現在SZの高クオリティ車は非常に少ないのだが、今回パリで開催されたRMサザビーズオークションに出品されたSZは、信じられないくらいのクオリティを保っている。というのもこの個体、シリアル708は、新車当時からガレージ保管されていたものなのだ。
新車当時から大切に扱われた個体
フランス人オーナーが1989年9月6日にアルファ ロメオのコンセッショナリーであるソプラーナ・オートモーディブ社にオーダーし、1992年3月7日に納車されたこの個体、オーナーが2014年に亡くなったあとは子供たちが厳重に管理を続けていた。
走行距離は7869km。低走行というのは、旧車の場合はかえって不安を覚えるポイントでもあるのだが、記録によると定期的な整備が続けられていて、2021年にはディストリビューターベルトが交換されていることから、機能的な問題はないという判断ができる。
そのため、ハンマープライスは9万8900ユーロ(邦貨換算約1400万円)という、ヤングタイマーとしてはまずまずのものとなった。たしか日本での新車価格は1000万円程度だったように記憶しているし、状態の良さからすればそれほど高いというものではないのかもしれない。
いずれにしてもこの年代のイタリア車は、保管状態が悪いとすぐに劣化する。それも、ボディだけではなく配線類やセンサーなどは、走っても走らなくても壊れてしまうもの。それが完調であるというのは、それだけでも価値がある。その価値を含めて考えれば、このハンマープライスは妥当なものといっていいのだろう。