一見すると矛盾したセッティングが一番乗りやすい!?
試乗は2ラップだけなので、2ラップ目はVDC-RはRモードにした上で、サスペンションはなるべく足が動きやすいコンフォートモードとする。さらにトランスミッションはSAVEモードに。一見すると矛盾するセットのようだが、これが今回の路面状況では一番乗りやすかった。トランスミッションは、結局早めのアップシフトや好みのタイミングでのダウンのためにパドルを使っての操作となる。このため、SAVEモードの効果は、穏やかな出力特性に見い出す形だ。
このドライブモードセットだと、過剰なパワー発生やレスポンスは抑えられ、必要なタイヤに接地荷重を与えやすい。さらに、全体としてはリア寄りの駆動力をもたらしながら、安定性が必要な際には即座に前輪へと駆動配分が高まること、かつVDCの介入度は控えめにすることで、コーナリングにおける安定性と姿勢の制御のバランスに優れるのだった。もちろんVDCはオフにもできるので、振り回すならばそれも有りである。その状況でも、横を向きながらも、しっかりと前に進ますことができるのは頼もしい。
毎年、雪上試乗会に参加しているなかで、だんだんと状況に見合ったセットアップを覚えてきたというわけだ。たとえば、何年か前の試乗会では、凍った湖面に雪が20cm以上積もった状況でところどころにかなり深い雪の轍(わだち)ができ、さらに穴状に大きく掘れてしまっているようなところも点在する荒れた路面だったことがあり、そこにタイヤを落とすとフロアが完全に路面に着いてしまうシーンがあった。その際には、VDC-Rはパワーが得やすいノーマルモードとし、サスペンションはバネ上がなるべく暴れないRモードを選ぶのが一番走りやすかった。
* * *
ただ、パワートレインの特性も、年々、パワーを高めながらも低回転域からのレスポンスが向上していたり、今回のTスペックのように、とくに足のしなやかな動きにこだわった仕様が生まれてきたりなど、単に絶対的な速さを増しているだけでなく、ドライビングの質も向上してきていることが、この雪上試乗会でより深く知ることができている。
17年前のデビュー当時には、このスタイリングでは……と思ったのも事実なのだが、いまとなっては、雪上などではからきしダメといったスーパースポーツの常識を覆しただけでなく、現在も世界一級の性能を維持し続けるR35 GT-Rには、あらためて畏敬の念を抱かざるを得ないのだった。