車名はクルマを語る上でも大事な要素
レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「車名の記号化」だ。マツダは国内市場でロードスターを除き、数字もしくは記号と数字という組み合わせのグローバルネームに統一した。ブランド化は図れるが、一方で慣れ親しんだ車名を残してほしいというユーザーも多い。根っからのクルマ好きである木下隆之の目には、どう映っているのだろうか。
車名の記号化は欧州では多く使われている手法
「マツダ6」が生誕20周年を迎えたという。それを記念して「20thアニバーサリーエディション」を発表。特別色を「匠塗」するなどして、一層、高級感を高めている。
とはいうものの、マツダ6の日本国内での歴史は浅い。2002年にデビューした日本名「アテンザ」は、海外では「マツダ6」として展開されていた。2019年になってようやく日本もグローバル名であるマツダ6を名乗ることになったのだ。日本ではまだ4年しか経っていない。それなのに20周年としているのは、アテンザから数えた数字なのだ。
そもそも、なぜ愛称が数字や記号になったのか。そこには巧みなブランド戦略がある。
マツダにはキュートな名称のモデルが多かった。キャロル、ファミリア、デミオ、アテンザ……。さかのぼれば、サバンナ、ルーチェ。親しみがあった。それを記号化することで、マツダブランドを訴求する。
「キミは何に乗っているの?」
そう質問されれば過去は、こう答えたことだろう。
「ああ、デミオだよ。その前はカペラだったけれどね」
「へぇ〜、それってどこのクルマ?」
ところが記号化することで、「僕はマツダに乗っている」となる。ブランドを浸透させるための手段なのだ。
BMWは1から8までサイズに比例して数字化されている。アウディしかりメルセデス・ベンツしかり。日本でも早くからブランド化に成功したレクサスは、すべて記号である。
フロントマスクのデザインが統一され、走りのテイストも共通化されている。マツダなどは、テーマカラーもすべてソウルレッドクリスタルメタリックで共通だ。数字と記号化することで、メーカー名をブランド化しやすいのである。
伝統ある慣れ親しんだ車名は残してほしいという思いも
ただし、トヨタやフォルクスワーゲンといったフルラインナップメーカーはそうはいかない。50車種を抱えるトヨタがすべて記号化したら、超複雑な暗号のようになってしまうだろう。クラウンやカローラ、ゴルフやポロなど名前に伝統があることも無関係ではない。マツダすら、さすがにロードスターの記号化はできまい。
ともあれ、盲目的な記号化はどうかと思うなぁ。スカイラインはいつまでもスカイライン(地平線)でいてほしいし、フェアレディZ(マイフェアレディ)は絶対そのままでいてほしい。そういえば日産は、オシャレな車名が多い。キューブ、キャラバン、キックスなんて、イメージそのままです。リーフは葉っぱだからいかにも環境に良さそう。秀逸は「アリア」。バッハが作曲したバイオリン独奏曲「G線上のアリア」を連想させるしね。
いやはや、記号化と愛称が混在する時代ですね。