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走行距離227キロの奇跡のフェラーリ! 未開封・保護フィルムつきの「エンツォ」のオーナーは日本人でした

走行距離227キロの奇跡のフェラーリ! 未開封・保護フィルムつきの「エンツォ」のオーナーは日本人でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2023 Courtesy of RM Sotheby's

日本で過ごしてきた奇跡のエンツォながら、入札は不調に終わった?

このほどサザビーズ・シールドのプライベートセールに出品されたエンツォ・フェラーリは、シャシーナンバー#132662。

新車として日本のコレクターのもとに納車されたのち、一度も走行登録されることなく、その生涯のほとんどを人目に触れることなく過ごしてきた。そのため、今となっても文字どおり「包装されたまま」の工場出荷時のコンディションで出品されることになった。

走行距離はわずか227kmで、そのほとんどは、納車前にマラネッロ工場周辺で行われるロードテストで刻まれたものとされる。

またカーボンファイバーの地肌がむき出しのドアシル、イグニッションキーに巻かれたテープ、ブレーキとアクセルペダルなどには、工場出荷時に貼られたブルー半透明の保護フィルムの多くがそのまま残っている。

さらに、真っ赤な純正ボディカバー、工場出荷時からジップロックに収められた各種の取扱説明書とスペアキー、純正の3ピース式ラゲッジセットなどが未開封のまま付属しているのも、正統性を物語る大きなポイントといえるだろう

すべてのフェラーリ・エンツォがコレクターズアイテムであることは間違いあるまい。しかし、今回の出品車両で何より注目を集めるのは、昨今注目の希少リバリー車であることだろう。

新車時に、アルジェント・ニュルブルクリンク101/Cのボディカラーで仕立てられたエンツォはわずか9台。しかも標準指定の「ネロ(黒革)/ロッソ(赤ファブリック)」コンビではなく、「クォイオ(ナチュラルブラウン)」のレザー内装が施されたのは、この個体のみと伝えられているのだ。

保護ラッピングをつけたまま保管された正真正銘の新車コンディション

「時代を超越したアルジェント・ニュルブルクリンクのボディカラーに、エレガントなオプションが施された#132662は、現時点でも非常に人気が高いうえに、これから将来にわたって永遠に敬愛されるであろうフェラーリのひとつ。工場で保護ラッピングが施されたままという驚くべきコンディションで、希少性とオリジナリティの両方を重視するコレクターにとっては、まさしく究極の1台となる……。」

そんな触れ込みとともに、サザビーズ・シールドはこの競売を「No Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定。さらにエスティメート(推定落札価格)も明示しないという、いかにもプライベートセールらしい秘匿性重視の出品としていた。

ところが、オンライン形式の入札は3月15日に解禁され、きっちり3日間・72時間後に終了となったものの、それから3日を経ても5日を経ても「Result(結果)」が発表されないまま、現在でも継続販売となっている。つまり売り切りだったはずのオークションながら、なんらかの理由で入札を停止したことになる。

これはあくまで推測の域を出ないのだが、思いのほか入札価格が伸びなかったことに対応し、出品者とオークショネア側の営業担当者でいったん撤退し、継続販売とするという判断が下されたのであろう。

このように、出品者の意向がより色濃く反映されるプライベートセールは、今後もっと増えてくるだろうと思わせる、実に興味深いオークション結果となったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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