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「ホンダN360」は「カローラ」も追い越した! トップセラーに上り詰めた人気車は改良の繰り返しでした【国産名車グラフィティ】

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TEXT: 片岡英明  PHOTO: 木村博道/日本自動車工業会/AMW編集部

生産体制を整えて軽自動車トップセラーを撃墜

N360が発売されると、販売店にはオーダーが殺到した。納車は数カ月待ちだったが、多くの人が飛びついたのは驚くほどリーズナブルな価格設定で、走りの実力も高かったからだ。生産効率を高めるためにモノグレードとしたが、ラジオやシガーライター、フォグランプ、トリップメーター、リクライニングシート、スポーツホーンなどのオプションパーツは豊富に揃えていた。

寒冷地のユーザーのためには容量をアップしたヒーターや強化バッテリーを用意した。そして驚かされたのは、前席3点式シートベルトや後席シートベルトなどの安全装備がオプション設定されていたことだ。社長の本田宗一郎はモータースポーツ好きとして知られている。それだけに安全性には強いこだわりを持ち、ユーザーの安全確保のために最大限の準備を行っていたのである。

納車待ちは3〜4カ月となり、オプションを装着すると納車は半年以上に伸びた。だが、発売した3月に2257台、4月には4000台に迫る届け出があった。生産が軌道に乗った5月は5570台と、販売台数トップだったスバル360を抜き去った。これ以降、毎月のように販売記録を更新していく。

慌てたホンダの上層部は、エンジンの生産を行う埼玉工場とボディなどの最終組み立てをする狭山工場に増産を命じ、8月には月産1万3000台体制を整えている。

だが、11月に2万台に迫る販売を記録した。さらに販売は伸びると予想し、12月からは生産ラインを月産2万台に引き上げている。同時に初めてのバリエーション追加も行った。新設定の「M」はラジオやリクライニングシートを標準装備したデラックス仕様だ。年が明けた1968年2月にはタコメーターを装備した「S」を仲間に加えている。

3月、画期的なモデルを追加した。それがクラス初の3速ATだ。複雑な遊星ギヤを用いないシンプルな構造だが、Dレンジだけでなく各ギヤをマニュアルで変速することもできる。最高速度は110km/h、0-400m加速は24.8秒と、活発な走りを披露した。6月に4グレードを揃えた「サンルーフ」も話題に。縦横700mmを超える大開口のキャンバス・スライディングルーフを採用し、開けると爽快なオープン感覚を満喫できた。

急激なバリエーション拡大で度重なる改良を施す

Mの上をいくゴージャス仕様も送り込む。それがタコメーターやトリップメーター、リクライニングシート、2スピードワイパーなど、30点以上の装備を加えた「G」だ。この時期にはトヨタ「カローラ」や日産「ブルーバード」も抜き去り、名実ともに日本のベストセラーカーへと成長している。

同時に輸出専用モデルだったN600Eを国内市場に投入した。登録車になるため大型バンパーを採用し、フロントマスクは3本スリットの専用デザインだ。また、ボンネットにはパワーバルジが付く。注目のエンジンは598ccのN600E型2気筒SOHCで、43ps/5.2kgmを発生する。N360E型エンジンより実用域のトルクが太いから扱いやすい。最高速度は130km/h、0-400m加速は20秒を切る19.7秒だ。維持費が軽自動車より高いため販売はイマイチだった。だが、強烈な印象を残している。

1968年は躍進の年だ。ラインナップの強化が止まらない。9月に吸気系と排気系に手を入れ、可変ベンチュリー式CVキャブを2連装した「Tシリーズ」を設定する。TSはスポーティ装備、TGは快適装備を充実させたグレードだ。圧縮比を9.0に高め、最高出力36ps/9000rpm、最大トルク3.2kgm/7000rpmを絞り出す。最高速度は120km/hに向上した。

だが、急激に生産台数を伸ばしたため、いくつかのトラブルが発生し、その対応に追われることに。FF車ならではのクセの強いハンドリングも指摘されたので毎週のように改良を施し、新設計パーツを組み込んだ。N360には同じ部品がない、と言われるほど改良は多かった。指摘された頑固なアンダーステアはユーザーの不慣れもあったが、ユーザーユニオンによる欠陥車騒動に発展し、裁判沙汰になっている。

1969年1月、ホンダN360は初めてのマイナーチェンジを実施した。外観の変更はわずかだが、乗り心地とハンドリングを改善するためにエンジンの搭載位置を変えて重心を下げ、ロールが大きいサスペンションにも手を入れている。エンジンも改良し、静粛性を向上させた。また、Tシリーズを「ツーリング」に名称変更し、ブラックフェイスとしている。この改良型はN IIIの登場後は「N II」の名で親しまれた。

N360の最終系が70年1月に登場したN III360だ。フロントマスクを大きく変え、ヘッドライトとグリルが分離したデザインになる。また、フルシンクロの4速MTを採用し、変速フィーリングを向上。そして8月、街乗りでの扱いやすさを狙って最高出力を27psに下げた「タウン」を設定している。これが最後の仕様変更で、1971年半ばには後継のライフにバトンを託した。

N360
●年式:1967年
●全長×全幅×全高:2995mm×1295mm×1345mm
●ホイールベース:2000mm
●車両重量:475kg
●エンジン:N360E型4サイクル直列2気筒SOHC
●総排気量:354cc
●最高出力:31ps/8500rpm
●最大トルク:3.0kg-m/5500rpm
●変速機:ドグクラッチ付き4速MT
●サスペンション(前/後):ストラット/リーフスプリング
●ブレーキ(前/後):リーディングトレーリング/リーディングトレーリング
●タイヤ:5.20-10-2PR
●新車当時価格:31万3000円〜

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