山に囲まれた温泉は雰囲気もゆったり
料金は2時間制で7ドル。温泉までは滝が見える5分ほどのトレイルを歩いていく。レンジャーの説明によると、段違いに3つのプールが並んでいて、上のプールから順に温度が高いそうだ。温泉の脇には冷たいクリーク(水路)が流れていて、ほてった体を冷やすのにいいですよ、という説明だった。
クルマの中でランチを済ませ、ひと足遅れで行ってみる。
お湯は何ともいえずに気持ちがいい。山に囲まれた雰囲気がいいからだろう。ソルダックの喧騒とは大違いだ。オレゴンに旅行する人には、ぜひダム湖近くの秘湯をおすすめしたい。
2時間のんびりと温泉を楽しみ、山道を歩いて戻ると「日の出もいいですよ」と出口のレンジャーにアドバイスされた。「日の出? 何時ごろ?」と聞くと、「5時過ぎでしょう」という。かなり早い。
翌朝、日の出は逃したが、6時過ぎに出かけてみた。さすがに一番乗りだろうと思ったら、全裸で熱く抱擁している熟年カップルが先にいた。世の中には、いろいろな人がいるものである。
次に目指すは再びカリフォルニアの海岸線
ぼくの放浪キャンプの最終目的地は、AKIRA隊長夫婦(LAで旅行代理店を営む)とのシエラネバダ・キャンプである。シエラネバダ山脈の東側にある町、ローンパインから、2泊3日のバックパッキング・ハイキングにチャレンジすることになっている。
そのためには、I-5(州間高速道路5号線)を下ってカリフォルニアに入り、5月に通った93号線で南東に行くのが便利だ。しかし、ぼくが選んだのは、オレゴン州のグランツパスでI-5を降り、国道199号線でカリフォルニア州の海岸線に入るルートだった。
その理由は、旅の前半でセバストポルのナネッタ(2021年に他界した友人のモータージャーナリスト、デビッド・フェザーストンの奥さん)の家に寄ったときにさかのぼる。家の前に愛車「ドル」を停めて、ナネッタと再会を喜んでいたとき、通りかかったティモシーという男が家のドアをノックした。駐車するときにドルのヘッドライトを消し忘れてしまったのを、彼がわざわざ教えてくれたのだった。
そして、「もし、3カ月後に旅を終えてこのドルフィンを売る気になったら、ぜひ声をかけてください」と言うのだった。ぼくは彼から手渡された電話番号のメモを手帳のカバーの中に押し込んでおいた。
秘湯から降りてカフェでひと休みしているときに、思い立ってティモシーに電話をしてみた。ドニー(LAの中国系インドネシア人)に預かってもらって2、3年はドルとの旅を続けるつもりだったが、大切にしてくれる人がいるなら売ってもいいかな、という気持ちが芽生えていた。電話に出たティモシーは、「電話してくれて本当にありがとう。ぜひ見てみたい」と興奮気味に答えた。
ぼくはカリフォルニアの海岸線を国道101で南下、セバストポル経由でローンパインに向かうことにしたのだった。
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