3ドア&4ドア&「アスティナ」のバリエーションも個性的だった
当然、実車もモダンで洗練されたムードをもつようになったというべきか。CMの話で3車と触れたが、それはボディバリエーションのことで、3ドア、4ドア、それと5ドアの「アスティナ」というバリエーション展開だった。いずれも「個性豊かで楽しいコンパクト・ファミリーカー」のコンセプトどおりの仕上がりで、とくにエクステリアデザインは欧州調のしっかりとしたスタンスを特徴とした。これは筆者の個人的な感想だが、形から3ドアはプジョー「205」、4ドアセダンはW124(メルセデス・ベンツ「Eクラス」)、アスティナはシトロエン「エグザンティア」を連想したが、それはいい意味で欧州車調の仕上がりだったからに他ならない。
5ドアのアスティナはスペシャルティクーペともいえるスタイリングで、ボブスレーがイメージという低いノーズにリトラクタブルヘッドライトまで採用し、シリーズの中でもひときわ個性を放っていた。カタログも、3ドアと4ドアが表紙に「3」「4」と大きくあしらった共通デザインだったのに対して、アスティナだけは表紙も中に使われている絵柄も、より雰囲気重視の仕立てになっていた。なおこのアスティナの兄弟車として設定されたモデルに「ユーノス100」があった。
メカニズム面では5機種のいずれも大幅に改良されたエンジンのうち、1.5Lと1.6Lの2機種のDOHCや1.7Lディーゼルを用意するなどなど意欲的なラインナップでスタート(アスティナのDOHCは1.5Lと1.8Lの設定)。さらに追加設定された日本初の前43:後57の前後不均等トルク配分を採用したフルタイム4WDには1.8Lターボを搭載している。また1992年になるとこの1.8Lはターボやインタークーラーの大型化で210psをモノにし、卓越した走りを披露する「GT-R」に搭載された。
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ところで今回取り上げたこの7代目ファミリアは、あの初代NA型「ユーノス・ロードスター」と同じ年のデビューでもあった。また1989年といえば、他社からもクラス、カテゴリーは違えど後に名車と言われるような記念碑的なモデルも多く登場した。そうした中で7代目ファミリアは、今から思うと、その年の新型車でありながら、今ひとつ押しが弱かったような気もする。とはいえカタログの仕立てからも伝わるように、かなり大胆なモデルチェンジを実行しながら、歴代モデルを凌ぐ、ファミリアの世界観に新風を吹き込んだ世代だった。