快眠の秘訣はマットにあった!
キャンプ道具をそろえる際、ついテントやファニチャーといった大物に気を取られ、表に出にくいモノは後回しにしがちだ。けれども快適を追求するには一点豪華主義ではなくほかの道具との組み合わせが重要。たとえば快適に眠るため優秀な寝袋を手に入れても、背中側の中綿が潰れるので断熱性は著しく低下する。このダメージを補ってくれるのがマットレスだ。
マットレスの役割とは
キャンプ用のマットレスには地面の「冷えを遮断する」「硬さやデコボコを解消する」という役割がある。
「冷えの遮断」については、一般的に厚くなるほど地面から物理的に遠くなるので効果は高くなる。ペラペラの銀マットでもある程度は冷えを遮断できるものの、厚手のマットレスだと内側に空気をたっぷり含んでいて、これが体温であたたまると最高の断熱効果を得られるのだ。
空気を閉じ込める部屋が大きすぎると熱対流によってあたたまりにくいが、最近はエアマットの中に中綿や断熱シートを入れて効率よくあたたかい空気を溜め込むモノも増えている。
このパッと見ではよくわからないマットレスの実力は、R値(熱抵抗値)を目安にしたい。断熱力を示す数値で、2020年より海外ブランドを中心に、世界的なマットレスの統一規格”ASTM F3340-18”による新R値が表示されるようになっている。
従来のR値はメーカーごとに測定方法が異なっていたのに対し、ASTM F3340-18によってメーカーが違うマットレスでも比較しやすくなり購入時の不安が低減した。すべてのマットレスに表示があるわけではないが、夏はR値1.0以上、春〜秋はR値2以上、通年利用はR値3.5以上、厳冬期はR値4.5以上が目安だ。
もっとも、R値1の夏向きマットレスも2枚、3枚と重ねればR値はおおよそ2、3となって断熱力を高められる。春先のキャンプなど思わぬ冷え込みに備えてペラペラマットでも用意しておくと助かることも。落ち葉や枯れ草をテントの下に敷き詰めるという方法もアリだ。
マットレス選びは店頭で試すに限る
地面の「硬さやデコボコ解消」は寝心地に直結する。これは数値では言い表せられないし、人によって好みの硬さがあるので実際に寝転んで試すほかない。
キャンプで使われるマットレスには広げるだけでいい「クローズドセルマット」、空気で膨らませる「エアマット」、エアマットの中にウレタンフォームが入っていて半自動で膨らむ「インフレータブルマット」がある。おおよその目安としては、クローズドセルマットは銀マットのようにデコボコがないもの(または浅い)ほど硬く、デコボコが深いものは適度なクッション性をもつ。
一方、エアマットは独特の反発力・ふわふわ感があり、インフレータブルマットは反発力は控えめだ。どちらも空気の量を調節することである程度寝心地を調節できるが、空気の量が少なすぎるとふとした拍子に”底付き感”が生じるので注意が必要だ。さらに、空気が入った各部屋が伸びる方向(横方向、縦方向、V型のチューブ。ドットタイプなど)でもフィット感や寝心地がずいぶん変わる。
多くのアウトドア専門店では、マットを敷いて寝転べるコーナーがあるので気になるマットレスは実際に寝転んで試すに限る。
音や収納、落ちづらさも確認
では、寝心地以外にチェックしたいポイントとは何だろうか。
まず、音。寝返りを打ったときに「キュッ」「ガサガサ」と摩擦音がするものがある。これが結構耳障りなのだ。
次は準備と収納だ。
厚さ10cm以上のインフレータブルマットは極上の寝心地をもたらしてくれるが、空気を入れるのに時間がかかり、排出がとにかく大変。1泊ならいいが、キャンプ地を転々とするキャンプ旅ではこの積み重ねで地味にダメージをくらうので、極厚エアマットや極厚インフレータブルマットを手にするなら、同時に小型の電動ポンプも用意しておくとかなり楽になる。
そして寝返りをうったときに落ちづらいかもチェックしておきたいところ。両側がわずかに高くなっているなど身体が落ちづらいデザインならなおよし。お気に入りのマットレスと極上寝袋を用意しても、サイトの微妙な傾斜でマットレスから滑り落ちてしまうことがある。ブランケットを併用してズレ落ちにくくするか、ワイドなマットレスやコットとともに使うと効果的。寝袋の背中側にマットレスを差し込むスリーブが付いているものがあるので、買い換え時にはこうしたモデルを選ぶのも手だ。
一部メーカーのエアマットには肉抜きデザインのものがある。これらは寝袋の中に入れて使うモノ。寒そうに思えるが、マットが肉抜きされているのでその部分は寝袋の中綿が潰れないのであたたかいし、寝袋の中にマットを入れるので落ちようがない。空気を入れる時間も少なくてすむ。寝袋が狭くなるので大きめの寝袋を用意しないと窮屈だが、マットレスから落ちてヒヤッと感じることがないのでかなりストレスが減る。
快眠は翌日のアクティビティや運転に影響を与える。妥協せずにマットレスを選ぼう。