コンセプトは「ウィービング ウォーター」
ロールス・ロイスはオランダのファッションデザイナー、イリス・ヴァン・ヘルペン氏とコラボレーションしたビスポークモデル「ファントム シントピア」を発表した。
空気のような美しさを表現
今回のコラボレーションは、前衛的でフューチャリスティックなデザインのイリス・ヴァン・ヘルペン氏のオートクチュールにインスパイアされたもの。イノベーション、クラフトマンシップ、ラグジュアリーの境界線を広げていくものだという。
「ファントム エクステンデッド」をベースとし、完成までに4年という年月をかけており、ロールス・ロイスのビスポーク・コレクティブが手掛けたなかでも、最も技術的に複雑な工程を経ている。なお、この1台のみのアートカーは、あるユーザーの依頼に応えたものだという。
ファントム シントピアは、イリス・ヴァン・ヘルペン氏がデザイナーのブランド「イリス・ヴァン・ヘルペン」の 2018年コレクションにちなんでいる。このコレクションは、自然界に見られるパターンや形からアートがインスピレーションを得ているバイオミミクリー(生物模倣)の原則に基づいてデザイン。
ファントム シントピアは、テーマとなる「ウィービング ウォーター(水を織る)」を通じて、固体素材の流動的な動きのとらえどころのない、空気のような美しさを表現したという。
イリス・ヴァン・ヘルペン氏は今回のコラボレーションについてこう語る。
「ビスポーク・コレクティブに出会ったとき、ロールス・ロイスの世界がオートクチュールと非常に似ていることを発見しました。私が創り出すすべての衣服はロールス・ロイスと同じように、クライアントの個々の寸法に合わせてオーダーメイドされた1点限りのものです。ロールス・ロイスのクライアントがデザインと製作の過程でグッドウッドに招待されるのと同じように、私のクライアントはフィッティングのためにアムステルダムのアトリエに来ます。多くのレベルで、このコラボレーションは自然な共生と言えるでしょう」
そしてファントム シントピアのコンセプト「ウィービング ウォーター(水を織る)」について、次のようにコメントしている。
「このコラボレーションのために、私は『ウィービング ウォーター』というコンセプトにインスピレーションされ、“動いている”という感覚をファントムで体感できるようにしました。自然の力に圧倒される、最先端の体験をしたかったのです。ファントムの力強い動きが、室内の変化する3次元の波に織り込まれ、自然の叡智を体現しています」
インテリアはコンセプトを体現した“美しいアート”
ビスポーク・コレクティブとイリス・ヴァン・ヘルペンの共同作業によるインテリアが最大の見せ場だ。ヘッドライナーには「ウィービング・ウォーター・スターライト・ヘッドライナー」が施されている。これは左右対称にカットした選び抜かれたレザー、コレクションで使用されているナイロン織物でできたシルバーの「リキッド・メタル」テクスチャー、162枚ものガラス・オーガンジーの繊細な花びらによって立体的に作り出されたもの。さらに、182個の光ファイバーの星を配置している。このヘッドライナーの制作だけで約700時間かかっているという。
リアシートはシルク混紡の専用ファブリックを用い、夜の水面に反射する光のような独特のパターンで飾られた。
さらに、香りにも注力されており、ビスポーク・コレクティブの調香師によって、車内の素材の香りも引き立てるというフレグランスが採用された。クライアントの出身地から取り寄せたシダーウッド、アイリスのパウダリーノート、パタゴニアのローズとマイルドなレモンがブレンドされている。
そして、エクステリアカラーには、ビスポーク・コレクティブがこのモデルのために開発した「リキッド・ノアール」を採用。このブラックは見る角度によってパープル、ブルー、マゼンタ、ゴールドが表れ、日光のもとでは虹色に輝くというもの。開発には数カ月を要したという。さらにボンネットには「ウィービング ウォーター」が描かれている。
なお、ファントム シントピアに合わせ、イリス・ヴァン・ヘルペン氏が1点かぎりのオートクチュールの衣装も手掛けているとのことだ。