軍事用エンジンを搭載するワンオフスペシャルマシン
排気量なんと2万7000ccのロールス・ロイス製V12エンジンを搭載したワンオフモデル「ザ・ビースト」がオークションに出品され、約1200万円で落札されました。「世界で最もパワフルなロードカー」としてギネスブックにも掲載される怪物とは? どのようなクルマか紹介しましょう。
戦闘機にも搭載されたロールス・ロイス製「マーリンエンジン」
「マーリンエンジン」と聞いて、ロールス・ロイス社の戦闘機エンジンを思い浮かべたなら、アナタは立派な軍事オタクだ。スーパーマリン・スピットファイアに搭載されていただけでなく、アメリカではパッカード社がライセンス生産していたので、ノースアメリカンP-51マスタングもマーリンエンジンを搭載してした。このV12気筒エンジンの排気量はなんと2万7000ccもある。「ザ・ビースト」と名付けられたワンオフのこのクルマ、まさに怪物である。
ベースとなっているクルマはなく、そもそもは1966年、ポール・ジェイムソンなる人物が戦車用のロールス・ロイス社製「ミーティア」エンジンを搭載した車両を作ったときからすべては始まった。そのとき、トランスミッション製作を担当したエンジニアがジョン・ドッドで、のちに同車両を手に入れ、現在の姿カタチに仕上げた人物だ。一時期は搭載エンジンにちなんで、ロールス・ロイスのグリルとマスコットが装着されていた。
もっとも、ロールス・ロイス社はドッドを相手取って商標権をめぐる裁判を起こし、ドッドは敗訴してグリルやマスコットは取り外された。なお、面白いことに、イギリスの車検証に相当するV5と呼ばれる書類上は「ロールス・ロイス」として登録されているそうだ。
気になる2万7000ccエンジンは、スーパーチャージャー付きのミーティアが最高出力1500psであったといわれ、自然吸気のマーリンは約750psを誇るという。トランスミッションはGM製ターボ400の3速ATを改造している。フロントサスペンションはオースチン由来のもの、そしてリアサスペンションはジャガー「XJ12」のものを改造し、リアアクスルは強靭なカリー製のものを組み込んでいるそうだ。