ビジネスエクスプレスの1台
開発はBMWから促されたと言われており、当時5シリーズの最大排気量が3.0L(175ps)なのに対して、同じ3.0Lの直6(ライト・シックスを搭載)ながら最高出力230psを発揮して、驚くべき高性能として羨望のクルマとなるのである。
その性能は0−100km/h加速が3.2秒、最高速度は230km/hをマーク。それはまさにアウトバーンの国ではビジネス・エクスプレスであり、BMWだけどBMWではないアルピナの地位を確固たるものにした。なお、これに触発されたのか、欧州ではモデル末期に「M535i」という、「M5」のご先祖様的なモデルが発売されている。
そしてこのB2そして「B6」(E21型3シリーズがベース)、「B7ターボ」(E12型5シリーズがベース:ともに1978年発表)の成功が、現在も年間2000台にも満たない販売台数のアルピナを独立した自動車メーカーとしてまで到達させるのだ(メーカーとして認定されるのは1983年)。
そして初期のアルピナモデルの数字はBMWの3シリーズとか5シリーズとリンクしておらず、3シリーズが「B5」や「C1」を名乗ったかと思えば、5シリーズが「B6」や「B9」を名乗るなど、少々解り難かったが、現在は解消されて分かりやすくなっている。
アルピナブランドが注目されるのはこれから
さて、2023年2月1日開催されたサザビーズ主催のオークションで、11万8000ユーロ(邦貨換算約1670万円)で落札されたアルピナB2は、1976年2月に登録された個体。1990年までは同じ所有者が維持しており、その後複数のオーナーを経て一度は忘れられそうになったが、2014年までに大がかりなレストアが施されて、ボディやエンジンはもちろん、ギアボックスやサスペンション等まで新車のようなコンディションに戻された。さらに当時の書類も残っているという、復活を遂げた1台だ。
落札価格を見て、意外と格安なのでは? と思うのは筆者だけではないだろう。アルピナのブランドがBMWに譲渡されることが確定になり今後の情勢は解らないが、半世紀にもわたって支持されたブランド力は昔のクルマがあってこそ。このB2は、今後も輝き続けるだろうアルピナの歴史の証人にほかならない。