新たに考案されたパワートレーンレイアウト
パワートレインの発表を聞いてマニアほど驚愕しただろう。かくいう筆者もプレビューに参加してパワートレインの実物を見た時、大いに驚かされた。カウンタック以来の伝統というべきパワートレインレイアウトをついに諦め、180度逆、つまりキャビンからみてエンジン→トランスミッションと配する常識的なレイアウトとなっていたからだ。
カウンタックからアヴェンタドールまでは、センタートンネルに大きなトランスミッションが置かれていた。それは天才パオロ・スタンツァーニが生み出した奇跡のレイアウトであり、これがあったからこそカウンタックの衝撃的なシルエットが必然的に誕生したのだ。
しかしPHEVとなったレヴエルトは重くてかさばるリチウムイオンバッテリーをどこかに置かなければならない。そこでトランスミッションを退けて代わりにバッテリーをおき、トランスミッションはエンジンの後方においた。後方に置くデメリット(スタンツァーニが嫌った所以)を解消すべき新たに軽量かつコンパクトなDCTを自社で開発(サプライヤーはグラツィアーノ)している。このDCTの上に電気モーター載せてリアアクスル上に横置きするという、またもや新しいレイアウトが考案されたと言っていい。
センタートンネル内に鎮座するVALMET製リチウムイオンバッテリーは高出力密度(4500W/kg)を誇っている。容量は3.8kWhと、PHEV用としては低容量(フェラーリ SF90の約半分)だが、繰り返し最大性能を得るために走行中でも短時間で再充電できることを優先した。ちなみにプラグイン充電ソケットはフロントブート内にあり、小さく隙間を開けた位置でフードをロックして充電を行う。
モノコックのキーワードは「ロッカーリング」
これもまた発表済みだが、レヴエルトの高性能を支える骨格はもちろんCFRPモノコック構造を採った。ただし先代アヴェンタドール用に比べて、更なる軽量化と高剛性を達成している。複数の成型法を組み合わせたユニークな設計で、さらに量産ロードカーとしては初めてフロントサブフレームにもCFRPを採用するなどカーボン化が進んでいる。
レヴエルト用モノコックボディは“Monofuselage(=単胴体)”と呼ばれる。メインのバスタブ、フロントファイアウォール、フロントサブフレーム、アンダーパネルなど50%以上の部位をサンタアガタが得意とする成型方法で作られたフォージド(鍛造)コンポジットとした。これは細かな炭素繊維を樹脂に混ぜてホットプレス(5000トン級)する手法。加えて伝統的なハンドレイアップ・プリプレグ成型はピラーからルーフにかけて、軽量かつ高剛性であると同時にクラスAの表面クオリティを必要とする部分に使われた。ちなみにフォージドカーボンとプリプレグ、新たに自動レイアップのプリプレグ・ホットプレスによるパーツは自社CFK工場にて生産される。CFK工場は以前に比べておよそ1.5倍の規模に拡張された。
工場で見せられたCFRPパーツの中で、最もユニークだったのは“ロッカーリング”と呼ばれる巨大な一体成型品だった。RTM(レジン・トランスファー・モールディング)で生産され、フロントサブフレームの接合部から両サイドシル、リアバルクヘッド下をリング状に一体成型する。その中にすっぽりとフォージドカーボン製バスタブがハマる仕掛けだ。ロッカーリングのみサプライヤーから供給を受ける。ちなみにこのボディ骨格コンセプトは今後、グループの他のモデルにも採用されるという。
モノコックボディと前後サブフレームの総重量はアヴェンタドール用に比べて10%軽く、捻り剛性は25%もアップした。驚異の動力スペックを支えるボディ骨格もまたマニアにとってはたまらないエンジニアリングの成果であった。
伝統の本社工場に入ってみれば、工場内は全くもって新しくレヴエルト用のアッセンブリーラインとなっていた。より働きやすく効率的で環境に優しい工場を目指したという。当面、その生産台数は日産7台。3月頭の時点ですでに60台余りのプリプロダクション個体が生産されていたようだった。
近々、日本でのお披露目もあるに違いない。とはいえすでに向こう何年かは完売とも噂されている。残念ながら現物をじっくり見てからオーダー、では遅い時代になってしまった。