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キャンプ場で焚き火用の斧が盗まれ、理不尽な人種差別も! 広大なアメリカ一人旅の悲しい出来事──米国放浪バンライフ:Vol.27

キャンプ場で焚き火用の斧が盗まれ、理不尽な人種差別も! 広大なアメリカ一人旅の悲しい出来事──米国放浪バンライフ:Vol.27

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TEXT: 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)  PHOTO: 牧野森太郎

愛用の道具は大切な友人のようなもの

斧は旅の途中で買った22ドルの何の変哲もないものだったが、盗まれたと知った瞬間、深い喪失感に襲われた。何度もファイアーリングの周りを探したが、もちろん、ない。「もう、焚き火ができないのか」クルマのソファに埋もれると、大切な友人を失ったような悲しさが込み上げてきた。それと同時に自分があの斧をそれほど愛していたことも思い知った。

旅に対するモチベーションを失いかけているときに起きたこの事件で、心の炎は一層、小さくなってしまった。これが3回目のスランプだった。

7月4日 雨の独立記念日

翌朝、雨の中を出発。気持ちは、ただ重かった。しかも、その日は宿泊先が決まっていなかった。月曜日なのにどこのキャンプサイトも空きがないのだ。おかしいな、と思ってカレンダーを見るうちに、ようやくその日が7月4日、独立記念日だと気がついた。これは、マズい!

レッドウッド国立公園に立ち寄って短いトレイルを歩き、午後も雨のなか、海沿いの国道101号を南下した。すると、街道沿いにRVパークの看板が見えた。規模が大きそうなので、もしかしたら空きがあるかもしれない。ハンドルを切って乗り入れてみた。

聞いてみると、運よくサイトが空いているという。ただ、家族連れが多く、花火やゲーム大会でうるさくなりそうだった。でも、独立記念日をそんな環境で過ごす機会もなかなかない。目いっぱい楽しんでやろうと気持ちを切り替えた。

RVパークで味わった理不尽な対応

フックアップ(電源と給排水)はいらないが、ダンプ(排水)はしたかった。タンクのなかにグレーウォーター(汚水)がだいぶ溜まっているはずだった。一度、クルマを止めてからオフィスでダンプ・ステーションの場所を聞くと、怪訝な顔をする。

「あなた、RVなの?」

「そうですよ」

「勘違いしていたわ。あなたはフックアップ・サイトに移らなければいけません」

「チェックインするとき、ぼくのクルマを見ていたじゃないですか。それに電気も水もいらないんだ。電気も水も使わないから、今のサイトにいさせてよ」

「ダメよ、規則なんだから。早くクレジットカードを出して。あと10ドル。それから、すぐクルマを移動して」

これにはカチンときた。

「そっちのミスだろ。謝るならともかく、なんで命令されなきゃいけないんだ!」

しどろもどろに抗議すると、白人女性の口元に薄ら笑いが浮かんだ。そして、隣の従業員に目配せをした。下手な英語、アジア人……。これまでの旅の途中で何度か感じた嫌な空気。これは、明らかな人種差別だ。

もう収まりがつかなくなった。「キャンセルする」「出て行くのね。上等だわ」クレジットカードで料金を払い戻しをしてもらい、ぼくはまた雨の101号線に出ていった。

■「米国放浪バンライフ」連載記事一覧はこちら

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  • 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)
  • 牧野森太郎(MAKINO Shintaro)
  • アウトドア誌、ライフスタイル誌などの編集長を経験。2001年にアメリカでキャンピングカーを購入して以来、国立公園を訪ねることをライフワークとする。著書に『アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅』『自分自身を生きるには 森の聖人ソローとミューアの言葉』(ともに産業編集センター)がある。カリフォルニア州シェラネバダ山脈のジョン・ミューア・トレイルを計30日かけて踏破したレポートがデルタ航空機内誌「sky」に掲載され、カリフォルニア観光局のメディア・アンバサダー最優秀賞を受賞。
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