スタイルはアメリカナイズされていた
写真で紹介しているデボネアの本カタログは実は1978(昭和53)のもの(一部1979年のカタログ写真も)。登場からすでにに14年目の年式となるが、どうだろう、「三菱の自動車」の写真と見比べても、前席ドアの三角窓の有無のほか、フェンダーミラー、ドアハンドル、ホイールキャップの形状の違い、テールランプ、ウインカー、サイドマーカー、オーナメントの位置、形状など細部ディテールに違いがあるものの、全体のスタイリングは基本的に変わっていないのがお分かりいただけると思う。
もともとGM出身のデザイナーによるデザインだけに、メッキのフロントグリル、バンパー、それと直線的なスタイルは実に堂々とアメリカナイズされたもの。けれどそれが全幅1690mmの5ナンバーサイズだったとは、今、写真で見ただけではにわかには信じがたい。
デボネアが登場した1964年当時というと、トヨタ クラウンエイト、プリンス グロリア、日産セドリックなどの高級車があり、三菱でもこの分野への参入と三菱の乗用車のフルラインナップ化が必然。そこに投入されたデボネアは、だから威風堂々としたクルマに仕上げられたのだった。
22年間販売されたデボネア
写真のカタログのモデルでは、搭載エンジンはG54B型、2555ccの4気筒モデル。これはASTRON 80と呼ばれていたMCA-JETという名の第3のジェットバルブの採用により、排気ガス規制に対応し省燃費も図っている。さらに、静粛性に寄与するサイレントシャフトを採用した、当時の最新ユニットだった。初期にあっては2Lの6気筒OHVエンジンを搭載、オーバートップ付き3速MTで最高速度155km/hと余裕を持たせており、もともと動力性能の点でもフラッグシップの資質は十分といえるものだった。
ちなみに“走るシーラカンス”と言われたのは有名な話だが、22年を全うし2代目にバトンタッチしたのは1986年のこと。この年の三菱車というと、スタリオンがすでに登場していたほか、ランサーEXターボ、2代目ミラージュ、FF化された3代目ギャラン/エテルナ シグマなどがあった。それらと並んでデボネアが“現行モデル”としてカタログに載っていたのだから、いかに古式ゆかしいクルマに見えたかは、当時をリアルタイムで過ごしていなくても想像がつくはずだ。
初代デボネアはその後、AMG仕様やアクアスキュータム仕様などを登場させた2代目に引き継がれ、さらに1992年には3代目が登場。そこから先はプラウディア(とディグニティ)となり、2012年からは日産フーガのOEM車として2016年まで続いた。とはいえクルマ好きにとって“デボネア”と聞いて思い浮かべるのは、やはり初代のあの威風堂々とした姿ではないだろうか。