その走り味はきちんと「跳ね馬」だった
フェラーリ初のMPV「プロサングエ」に、北イタリア有数のウインターリゾートでついに試乗。そのダイナミック性能はまさにマラネッロ製スポーツカー、つまりは「フェラーリ」です。
フェラーリ初の「SUV」はSUVらしく走らない
マラネッロはプロサングエのことを決してSUVとは呼んでいない。たしかにその車高はというと、例えば大型SUVとしては異例に車高の低いランボルギーニ「ウルス」やアストンマーティン「DBX」に比べてもさらに低く、そのサイズ感さえ無視したならば、妙に大きなタイヤを履いた5ドアハッチバックに見えなくもない。とはいえ、フェラーリ初の4ドア(5ドア)モデルであることは間違いない。マラネッロにとって初めてのMPVだ。
とはいえ、実物を目の当たりにするとやはり相当でかい。威圧感も十分。長さや幅は4シーターモデルの「GTC4ルッソ」に近く、車高も1590mmとしっかりある。一般的に言えば当然、SUVの部類だろう。マラネッロがいくら違うと言ってみたところで、そう見えるのだから仕方ない。とはいえ……。
ひとたびプロサングエの運転席に座り、その走りを少しでも体験したならば、このクルマがいわゆるSUVらしく走らないことを知るはずだ。フェラーリのSUVに否定的な見解を持つ人にこそ、一度ステアリングを握ってもらいたい。そのダイナミック性能はまさにマラネッロ製スポーツカー、つまりは「フェラーリ」だった。
もっともそんな期待はすでに2022年9月、その全容が明らかとなったワールドプレミアの時点からある程度の予測はできた。「812」シリーズ譲りのV12自然吸気エンジンを完全フロントミドに搭載、8速DCTをリアアクスルに組み合わせたトランスアクスル方式とし、「FF」以来の4WDシステムを進化させて組み合わせていた。
そしてエンジニアが何よりも強調したのが全く新しいアクティブサスの採用で、このテクノロジーの実用が計算できたからこそ車高の高いフェラーリは実現したと言っていた。既存のスーパーSUVたちとは一線を画する内容であったことは間違いない。つまり期待は大いに膨らんでいたというわけだ。
ウエルカムドアという観音開き式4ドアを採用した理由も、乗降のしやすさのみならず軽量化と剛性の確保に有効だったから。ホイールベースは4シーターのGTC4ルッソと変わらず。フロントミッドシップパッケージや4WDシステムの構成を見れば、事実上、進化したルッソの車高を上げて大径のタイヤを履かせたような具合だ。
ダイナミック性能において最も重要な役割を果たしたのは、前述したようにアクティブサスペンションシステム。これは電気モーターによって車高やロールセンターを4輪個別に精密かつ瞬時に制御するものだ。