いつの日にか……と思っていたセブンに乗った!
AMWリレーインプレ第4弾の車種は、編集会議で突如ケータハム スーパー7(以下:セブン)に決まった。当初、フロントウインドウ付きの170Sをお借りする予定だったのだが、なんとありがたい手違いがあったようで、“サーキットから戻ってきました! スタイル”の170Rがやってきた。子どもの時から思い焦がれてきたセブン、セブンセブン、セブンセブン、遙かな……、憧れのセブンに試乗したレポートをお届けする。
乗る前から「楽しみだったセブン」
ここだけの話、楽しみでしかたなかった。小学5年生の頃、勉強もせずに自宅の近所を自転車で徘徊している時に見かけたのが、工場の奥にひっそりと佇んでいたケータハム スーパー7 1700 BDRだった。
後日、愛車を磨くオーナーを見かけ、話しかけた。子どもながら「すごいで、すね。かっこいいで、でっすね」なんて会話をした記憶がうっすらと残っている。歳を重ねるにつれて、イベントでスーパーセブンを見かけるたびに、「ウルトラ以上にすげーなー」とシゲシゲと眺めることが多くなった。
前置きが長くなってしまったが、初めて目撃した日から20年という月日が経過した今、自分が運転する機会に恵まれるとは思いもしなかった。だから“楽しみでしか”なかったのだ。
ケータハム50周年
少しだけスーパーセブンの歴史を振り返ると、ロータスから製造権利と生産設備を引き継ぎながらロータス セブンSr.4を販売していたのが1973年となる。翌年の1974年には、現代に通じるケータハム スーパーセブンが誕生したのだ。
走ることの愉しさを追求しながら進化を遂げていった同社は、2014年にスズキ製の660cc直3ターボエンジンを搭載したセブン160をデビューさせた。日本では排気量の関係もあって軽自動車登録となった第2弾が170S(ロード志向)とR(サーキット志向)となる。
エンジンはジムニー、トランスミッションはエブリイ
簡単にスペックを紹介すると全長3100mm×全幅1470mm×全高1090mmでホイールベースは2225mmとなる。エンジンはジムニー(RA06型)と同じ直3ターボを85psにパワーアップして搭載し、トランスミッションはスズキ エブリイの5速MTを組み合わせる。
実車と対面すると、ニヤニヤしながらあちこちを覗き込んでしまった。ホイールは14インチでデザインが新しくなっている。組み合わされるタイヤは AvonZTで前後共に155/65R14だ。ノーズコーンやサイクルフェンダーはオプションのカーボン製になっている。
スイッチ類はいたってシンプル
コクピットドリルはあらかじめ聞いていたので、あとは乗るだけ。ちなみに、スイッチ・メーター類は、左から順にハザード、フォグランプ、ガソリン計、デフロスター、エアコンスイッチ、水温計、油温計、ウィンドウウォッシャー、ワイパーの下に、ウインカーとスターターボタン、タコメーター、スピードメーター。ホーンボタンとその上には、ヘッドライトのスイッチが備わり、右側にはハイビームとロービームとなっている。
とはいえ、今回借りたスーパーセブンはフロントウインドウ(さらにはヒーター・エアコン)を持たない170Rなので、使わないボタンがいくつもある。必要最低限さえ覚えていれば問題はない。
脱着式のステアリングを外し、カーボン製のシートに足を載せてから腰を下ろす。シートスライドの幅が意外にもあったことに驚いた。やはりポジションセッテイングにこだわりがあるのだと分かるペダル類の位置を確認するも、とにかく足元が狭い。左足はクラッチペダルのみの操作となるので問題ないが、右足はアクセルなのかブレーキなのか、きちんと体で覚える必要がある。
走り出した瞬間から軽さとダイレクト感を感じられる
やや見えにくい位置にあるキーを差し込み、ワクワクしながら赤いスターターボタンを押すと軽いクランキングのあとに「ヴフォン」と吠える。軽くブリッピングをさせてみると、右足にリンクするようにタコメーターが跳ね上がった。ダイレクト感がすごい。
やや硬めのギアを1速に入れ、クラッチをそ~っと繋ぐとスッと動き出した。か、軽い……車両乾燥重量は440kgしかないから当然だ。クラッチのミートポイントが手前で、発進こそ最初だけ苦労したが、シートに収まってしまえば普通に走ることができる。
今回は170Rなので、飛び石などを考慮し、帽子にサングラス、排ガスで顔を真っ黒にしないようにマスクを着用して試乗したが、ハーフヘルメットにゴーグルというスタイルが理想的といえる。
そんなわけで、下半身以外はすべてむき出しなので、楽しいというよりは、どちらかといえば、怖いぐらいだ。車間距離を一定に保ち、2車線のところではなるべく並ばないように意識するなどのコツこそ必要だが、それ以外は気を使うことなく走ることができる。交差点を曲がるだけでも、楽しいと思えるのも軽さのおかげだろう。誰もが振り返るスタイリングにビビりがちな私はなるべく一車線と裏道を選んで走るようにした。
クルマに興味がない人でも魅力的に映る
一時停止を停車すると、偶然、GRスープラの試乗に付き合ってくれた友人と遭遇した。せっかくなので安全な場所にクルマを駐めて助手席に座ってもらうことにした。
「スーパーセブンっていうんだ? すごいね、初めて見たよ。軽自動車登録なの? シートは硬いけど、収まってしまえば居心地がいいね。足元も思ったよりも狭くない。動くと怖そうだけど、それなりの装備をすれば、助手席でも楽しそう」
と、クルマに興味がない人でも魅力的に映るようだ。
友人が気づいたように、街なかでは、注目度も満点で、試乗中に多くの人から指をさされた。宅配便のお兄ちゃんにはすれ違い様に「今度乗せてよ!」と声をかけらたり、信号待ちで小さな子供に「ママーしゅごい!」という声も聞こえた。スーパー7には人の心を動かす何かがあるらしい。
撮影を済ませ、コンビニに向かうことにした。駐車場入口の段差こそ気を使うが、それ以外は普通の軽自動車と同じだ。飲み物を買い、クルマに戻るとスマホで撮影している女性が居たので、声をかけてみると、やはりスーパーセブンが珍しいということで吸い寄せられたという。
これまたせっかくなので、インプレッションを伺いたく助手席に座ってもらうことにした。
「私も運転をしますが、シートに立ってから乗り込むのは初めてです。女性が乗るときは、足を載せたあとに汚れを拭き取るかタオルを置く必要がありますね。座った感じは、ジェットコースターというか……夢の国にあるアトラクションの乗り物みたいです(笑) これでデートに行こうって言われたら嫌ですけど、近所に買い物に行こうって言われたら乗っちゃうかもしれません!」
といった感じで、拒絶反応どころか意外にも興味本位で乗ってみたいという声もあった。
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今回はスケジュールの関係で25kmほどの距離しか走っていないが、その短い距離でも「怖い」から「十分に愉しい」に変わった。交差点ではヒール&トゥが決まり、自分が思い描いたドライビング通りに走れれば、まさに人馬一体を味わえた。見た目以上に運転は難しくないのがポイントだ。とはいえ、走り終えたあとの疲労感が凄い。その後のお風呂は最高に気持ちよかった、ということでもあるのだが。
過去にスズキ カプチーノを所有していたことがある私だが、軽スポーツカーはあらためて魅力的な1台だなと思った。いやー、やっぱりスーパーセブンいいなぁ……と価格表を見たら698万5000円(税込)。うーん、乗り味も値段もスパルタンな1台だった。