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新型「レンジローバー」に恋して! 「ベンテイガ」や「カリナン」にはないものとは?【1weekクルマ疑似恋愛】

新型「レンジローバー」に恋して! 「ベンテイガ」や「カリナン」にはないものとは?【1weekクルマ疑似恋愛】

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TEXT: AMW 西山嘉彦(NISHIYAMA Yoshihiko)  PHOTO: 神村 聖/西山嘉彦

レンジローバーの気になったところ

きっと新型レンジローバーが、初のレンジローバー体験であったら、ほかにもたくさんピックアップするべき装備やそれら装備の特徴があるだろう。しかし、慣れ親しんだ者としては少し変わった装備の方に意識がどうしても向いてしまうものだ。

レンジローバー、というかランドローバー全般に共通するイメージは、頼り甲斐のあるアドベンチャーの相棒といったところか。その印象は高い悪路走破性によるものが大きかった。どこにでも進んでいけるという安心感は、レンジローバーに守られているという感覚に還元される。みなとみらい方面から都内へと向かう湾岸線で、この「守られている」感に、新たな項目が加わった。

それは、キャビン内と外界との断絶が可視化されている点だ。大自然を感じてドライブしたいシーンでは、窓やサンルーフを開け放てばよい。しかし、レンジローバーを普段使用する都市部では、むしろ窓は閉じてクリーンな空気に包まれていたい。家庭用の空気清浄機なるものが普及しているのと同じ理屈だ。

ベイブリッジを渡るとすぐに湾岸線の両側には工業地帯が広がる。通ったことのある人ならわかると思うが、風向きによっては独特の理科室での実験のときに嗅いだような臭いが鼻につくことがある。大気が汚れているという証拠なのだけれども、それがレンジローバーでは可視化できるのである。

インフォテイメントのモニターでエアクオリティを見ると、ひどいところでは外気は極めて汚れていることを示すオレンジ〜レッドを示し、車内は清潔なグリーンで表示されている。確かに運転していて独特のスメルは感じない。都内の主要幹線路でもモニタリングしてみると、信号待ちなどで多くの大型トラックが前にいる時なども同じような状況を示していた。旧車で同じところを走ると、確かにいつもリアルにいろんな臭いを感じるし、ドライブ後に白いおしぼりで顔を拭くと真っ黒に汚れていることがあるが、つまりはそれだけ汚れた空気の中にいるということである。大袈裟に表現すると、レンジローバーは大気汚染からも守ってくれているのだ。

レンジローバーを購入する夢を見る

レンジローバーはレンジローバー。比較するものがないという点においては、前述の通り911と同じだが、あえてコンペティターとしてあげるならベントレー ベンテイガか。しかし、どちらを選ぼうかなどという悩みを抱く人は、実際の購入者には少ないだろう。それだけブランディングが確立されているので、ライフスタイルや自らの主義主張に合わせて選べば、自ずと答えは決まっている。

レンジローバーは、2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーのテンベストに選出されるほどモータージャーナリストのウケがいい。試乗記などはおしなべて絶賛の嵐。それを鵜呑みにして購入したら、なんか物足りないという人が中にはいるかもしれない。モータージャーナリストが褒め称えているのは、レンジローバーの走行性能のことであって、購入したあとのライフスタイルにまでは想像が及ばない。性能評価とは本来そうあるべきものであるけれど、レンジローバーのような極めて趣味性嗜好性の高い実用品の場合、評価軸は多元的であるべきだ。嗜好品であるがゆえに問われるのは、クルマそのものの良し悪しではなく、感性に合うか合わないかである。

シートに座り直して、レンジローバーを購入して他に目移りしないだろうかを考えてみる。ミース・ファンデルローエが好きで、自宅キッチンのコンロには、柳宗理のケトルを置いているような人は、きっと自宅もモダニズムの影響を受けた意匠であるに違いない。そうした住宅のガレージやカーポートに収まると、レンジローバーはしっくりきそうである。ベンテイガやましてカリナンではない。

と、ここまでレンジローバーのオーナー像をプロファイルしてみて、わが身に置き換えてみる。確かに自宅キッチンのコンロには柳宗理のケトルが置かれていて、若い頃はコルビジェより断然ミースの建築に惹かれたけれど、残念ながら息子2人は家族と出かけるよりも友人たちや自分ひとりで旅する年齢になってしまった。レンジローバーは、1人で乗るには広すぎる。せめて助手席にパートナーを乗せて出かけたい。ということは、レンジローバーにふさわしい男になるには、まずは妻のご機嫌取りから始めなければならない。つまり、オーナーへの道は果てしなく険しい……のだけれども、V8モデルはオーダーしてから納車まで3年以上かかるだろうから、それまでに策を練るとしよう。

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  • AMW 西山嘉彦(NISHIYAMA Yoshihiko)
  • AMW 西山嘉彦(NISHIYAMA Yoshihiko)
  • AMW編集長。大学卒業後、ドキュメンタリー映像の助監督を経て出版業界へ。某建築雑誌の版元で編集技術をマスターし、クルマ系雑誌編集部のある版元へ移籍。その後、版元を渡り歩きながら興味の赴くままにカメラ雑誌、ガレージ雑誌、グラビア誌のほかにBMWやランボルギーニの専門誌などを立ち上げ、2017年までスーパーカー専門誌の編集長を務める。愛車はBMW E30 M3。日本旅行作家協会会員。兼高かおる賞実行委員。近況は、個人ブログ「ART LIFE mag.」にて。
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