どうして車名に「デリカ」を用いることを決めたのか
ところで、気になるのは「デリカミニ」という名前と、いかにもデリカらしいルックスの誕生経緯だが、デザイナーや商品企画担当者の話をまとめると、自然発生的にデリカのエッセンスを使うというアイデアが生まれてきたという。
車名が決まる前段階のスケッチから歴代デリカのテイストを感じさせるデザイン案が提示されたとのこと。三菱にとってデリカは非常に大きな価値と長い伝統を持つブランドである。歴代デリカと同じく後席スライドドアを持つ軽スーパーハイトワゴンに、そのエッセンスを利用することは三菱らしさを主張できるということでもある。
こだわり抜いたフロントマスクはデリカらしさを際立たせる
とはいえ、単にデリカD:5のスケールダウン版では市場に受け入れられないのはeKクロス スペースの反省からも明らか。「デリカのテイストを軽スーパーハイトワゴンのボディにデフォルメして表現することが必要だった」とデザイナー氏はいう。具体的にいうと擬人化できるような顔つきを市場は求めていると考えた。
デザインのポイントといえるのは擬人化しやすい丸目モチーフのヘッドライトと、そこから下に広がっていくような形状のガンメタリックの部分だ。この表現は三菱のダイナミックシールドを示すと同時に、1980年代のRVブームにおいてデリカの定番アイテムとなったプロテクトバーをモチーフとした造形。そして前後の大きな「DELICA」の車名が伝統を受け継いでいることを主張する。
ただし、デリカミニは単純にデザインテイストとしてデリカの伝統を利用しただけのニューカマーではない。デリカといえば、かつてクロカン1BOXという表現で紹介されることが多かったように、余裕のパッケージと悪路走破性を両立していることが大きな価値となっている。
そのためデリカミニにおいても、4WDについてはNAエンジン、ターボエンジンを問わず165/60R15という大径タイヤが与えられ、専用のショックアブソーバーと組み合わせられている。知られているように、三菱の軽自動車は日産との合弁会社であるNMKVで開発を進めるため、基本的には三菱独自のテイストを盛り込むことは難しい。
しかし、デリカミニの開発においては三菱のデリカ開発チームの知見による足まわりのセッティング案をNMKVに提示するなどして、デリカという名前にふさわしい走りを手に入れたという。
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今回、公道を含めて試乗することはできなかったが、写真を見ていただければおわかりのように撮影場所は段差もあるキャンプ場だった。撮影スポットへの「移動」で感じた第一印象をお伝えすれば、タイヤのエアボリューム増と専用の足まわりによる安心感はデリカという名前にふさわしい。
デリカミニのキュートなルックスを求めるのであればFFでも十分だろうが、デリカらしい走り味も求めるのであれば、ぜひとも4WDを購入検討してほしいと思わずにはいられない。
●MITSUBISHI DELICA MINI
三菱デリカミニ(T Premium/4WD)
・車両価格(消費税込):223万8500円
・全長:3395mm
・全幅:1475mm
・全高:1830mm
・ホイールベース:2495mm
・車両重量:1060kg
・エンジン形式:直列3気筒DOHC
・排気量:659cc
・駆動方式:四輪駆動
・変速機:CVT
・エンジン最高出力:64ps/5600rpm
・エンジン最大トルク:100Nm/2400〜4000rpm
・モーター最高出力:2.7ps/1200rpm
・モーター最大トルク:40Nm/100rpm
・燃料消費率(WLTCモード):17.5km/L
・燃料タンク容量:27L
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)トルクアーム式3リンク
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッド・ディスク、(後)リーディング・トレーリング式ドラム
・タイヤ:(前)165/60R15、(後)165/60R15