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【現存数3台】新車価格「約1億3000万円」だったヤマハ「OX99-11」とは? マクラーレン「F1」と共通項の多い幻の名車3台ぜんぶ見せます!

美しいデザインは由良拓也氏によるもの

マクラーレンF1に匹敵する「ロードゴーイングF1」

ヤマハ発動機が1991年にリリースしたスポーツカーを覚えているだろうか? 室内はオートバイのようなタンデムスタイルの2人乗りだった。1994年の発売を目指し開発が進められたが、世界的な経済変動の影響を受け、公道に放たれることなく終わったOX99-11を振り返る。

1989年からエンジンサプライヤーとしてF1に参戦していたヤマハ

ロードゴーイングカーとは一般公道を走るクルマの総称だが、スポーツカーの世界では、限りなくレーシングカーに近い公道仕様のクルマを指すことが多い。そうした中、20世紀最高のロードゴーイングカーと呼ばれているクルマがある。そのクルマとは、マクラーレン「F1」だ。

鬼才ゴードン・マーレイが設計し、カーボンモノコックボディに、車体中央にレイアウトした運転席は、まさにF1直系といえる。BMW製の6L V12気筒との組み合わせで、まさに究極のスポーツカーだった。しかし、日本にもそのマクラーレンF1に匹敵する、極めつけのロードゴーイングカーがあったのだ。それがヤマハ「OX99-11」である。

ホンダに次いで、1989年からエンジンサプライヤーとしてF1に参戦していたヤマハが、初の市販四輪車として計画していたスーパーカーだ。車名の「OX99」は19991年にブラバムチーム(最高位5位)、1992年にジョーダンチーム(最高位6位)に供給していたF1用の3.5L V12気筒(5バルブ)エンジンの型式だった。

レブリミットは10000rpmオーバー、12連スロットルやドライサンプ潤滑方式もF1のエンジンから踏襲。そのOX99エンジンを公道向けにデチューン(それでも450ps!)し、ミッドシップに搭載しようとしたのだから半端ではない。動力性能は、公称で最高速度は350km/h、0−100km/h加速は3.2秒という堂々のパフォーマンスだった。

デザインはムーンクラフトの由良拓也が担当

ボディデザインは日本を代表する空力デザイナー、ムーンクラフトの由良拓也が担当。オートバイメーカーのヤマハらしく、運転席と助手席が縦二列、タンデムに並ぶのが最大の特徴だ。シャシーの主要部にはCFRP+ケブラーを使い、エクステリアはアルミとFRPの組み合わせ。イギリスの熟練工によるハンドメイドで、ウイングと一体となったフロントカウルと、本格的なリアディフューザーで、エアロダイナミクス的にはレーシングカーに見劣りしない性能を秘めている(1983年のル・マン24時間で初のクラス優勝を果たした、由良拓也氏デザインのマツダ717Cに通じるスタイルだ)。

サスペンションは、前後とも長いサスアームを使ったプッシュロッド式のダブルウィッシュボーンで、これもまたフォーミュラカーそのもの。

世界的な経済変動の影響を受け販売を断念

CFRP製モノコックで、運転席をセンターに配置。NAのV12気筒エンジンをミッドシップに載せた空力マシンと、マクラーレンF1と共通項も多いヤマハOX99-11。1992年に発表され、予価100万ドル(約1億3000万円)で1994年にデリバリー開始とアナウンスされたが、バブル崩壊、ヤマハの業績悪化、世界的な経済変動の影響を受け、1993年に販売を断念……。

それでも3台が現存し、今でもヤマハが動態保存している。ヤマハの袋井テストコースで行われる「ヤマハ歴史車両デモ走行・見学会」で走らせたこともある。ちなみにマクラーレンF1は1992年に発表され、初号機のデリバリーは1994年の12月。新車価格は53万ポンド(約1億1800万円)だった。

ヤマハOX99-11も発売まで漕ぎ着けることができれば、マクラーレンF1に匹敵する「ロードゴーイングF1」と評価され、好敵手になったはず。計画が頓挫してしまったのは残念でならない。

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