ジューク皮を被ったGT-R
ランボルギーニ「ウルス」やベントレー「ベンテイガ スピード」、アウディ「RS Q8」、マセラティ「レヴァンテ」など、SUVでも最高速度が300km/hに達するモデルが出てきているが、国産SUVでも世界最速のクロスオーバーを目指して開発されたクルマがあった。それが日産の「ジュークR」だ。
パワートレインをまるごと移植
2010年に登場した初代ジュークをベースに、BTCCの日産プリメーラの開発を担当し、2012年には日産のデルタウイングでル・マン24時間レースに参戦したイギリスのレイ・マロック社がチューニングを手掛けている。NTCE(日産ヨーロッパ・テクニカルセンター)とNDE(英国日産デザインセンター)も開発に関わり、R35GT-RのVR38DETTエンジンをジュークに移植した。
エンジンスワップだけでなく、DCTやトランスアクスルをはじめとするR35の4WDパワートレインをそっくりスワップし、ブレンボのブレーキシステムやRAYS製純正アルミホイールなどもR35から流用している。ボディはロールケージで補強され(FIAの安全基準に適合)、インテリアもメーター類とマルチファンクションディスプレイなど、R35と同じものを使用した。
欧州日産が2012年に市販化を実現
そのパフォーマンスは、2011年につくられた最初のワンオフモデル(487ps仕様)でも、0-100km/h加速が3.7秒、最高速度が257km/hと圧巻。こんな特殊なクルマ、ワンオフのコンセプトカーで終わりと思いきや、欧州日産が2012年に市販化を実現している。
しかもエンジンは、2012年型のR35GT-Rに搭載されていたVR38DETTになったため、ワンオフ仕様の487psから553psと66psにパワーアップしている。驚くことに公道走行が可能で、少なくとも3台はユーザーの手に渡っている。ちなみに車両価格は1台50万ユーロ。日本円で5000万円以上だ。
浜田省吾の作品に「19のままさ」という曲があるが、「ジュークR」はちっとも「ジューク」のままではなく、スカイラインクロスオーバーならぬ、「R35GT-Rクロスオーバー」というべきポジションのクルマだった。
600psエンジンを搭載した最強モデルも
さらに2015年6月の「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」(イギリス)では、その進化版の『ジュークR 2.0』の存在が明らかになった。同モデルは、GT-R NISMOの600psのエンジンを搭載。
エクステリアもカーボンファイバー製の前後バンパーや、カーボン製リアディフューザー、ジュークNISMOと同タイプのリアウイングを装着。フロントバンパーの開口部も広がり、精悍さとアグレッシブさを増している。
エコだ、EVだといわれても、けっきょくクルマ好きはこうしたジュークRのようなクルマが大好きで、チューニングも過激であればあるほど面白いもの。環境問題については、バイオ燃料やカーボンニュートラルフューエル(CNF)の普及で折り合いをつけてもらい、こうした度肝を抜くクロスオーバーSUVや本格的なスーパーカーの火を絶やさないでもらいたいところだ。