3代目(1979~90年) 大きくて壮麗なクアトロポルテのイメージを確立
1974年にイタルデザイン・ジウジアーロが、マセラティ「インディ」のシャシー上に構築したコンセプトカー「メディチ」および「メディチII」のデザインテーマを市販モデルとして具現化したのが、3代目クアトロポルテ。デ・トマソ・グループの傘下に入って1年後の76年秋、2ドアのビッグクーペ「キャラミ」に次いで発表されたが、生産準備に手まどったため、実際のデリバリーは79年まで持ち越された。
シャシーはデ・トマソの大型4ドアサルーン「ドーヴィル」のフロアパンを流用し、イタルデザインの手がけた全長4.9m級の大型4ドアサルーンボディを架装。伝統のマセラティV8を搭載したのが、このクルマの基本的な成り立ちである。
もとをただせば1950年代の超弩級レーシングスポーツ「450S」に端を発するV型8気筒4カムユニットは、先代同様4.2Lがスタンダードとされたが、4.9Lも選択可能とされていた。排気ガス対策に備えて少々デチューンされたとはいえ4.2L版でも255ps、4.9L版では290psを発生。5速MTないしは3速ATが組み合わされた。
このV8パワーは1900kgの超ヘビー級ボディにも充分以上のもので、4.9L&5速MTの組み合わせでは238km/hの最高速度を誇称。世界最速サルーンの座は防衛できたが、このクアトロポルテIIIをなにより印象づけたのは、最強のライバルと想定したメルセデス・ベンツ「450SEL6.9」などよりもはるかにゴージャスな内外装だった。
1986年には、エンジンを4.9Lに統一。内外装をさらに豪華絢爛に仕立てたロイヤルへと進化を遂げる。クアトロポルテIIIは1990年ごろまでに2141台が製造され、そのうち53台がロイヤルだったと言われている。