安価な時代に買ったオーナーたちは現在も大切に維持
ディーノは206GTが150台、246GTのLタイプが357台、Mタイプが506台、246GTSを含むEタイプが2898台ほど生産されたといわれていおり、いまでも趣味車のイベントに行くとディーノを見かける機会がある。
底値のときには500万円前後で流通していたディーノだが、いまや流通価格が驚くほど高騰してしまい、1億円を超える金額で取り引きされる個体まで登場。一般人でも頑張れば買える身近なスーパーカーではなくなってしまった。
筆者の知り合いのディーノ・オーナーたちは往時に600~800万円で買っており、流通価格が2000万円オーバーとなったときに売ってしまった人もいたが、ほとんどの人が購入時の10倍ぐらいのプライスとなったいまでも愛車を大切にしている。
安かった頃は街中で遭遇することもあったが、新たにオーナーとなるための軍資金が最低でも5000万円ぐらい必要になる現在は、ディーノに乗ってウロウロするオーナーがいなくなってしまった。もしも「野良ディーノ」と出会うことができたら相当ラッキーだ。
今やレストア必須の事故車でも驚きの高額で落札
ディーノの流通価格は高値で安定しており、去る2022年11月にドイツでRMサザビーズが開催した「MINICH」オークションでは、1969年式ディーノ206GTが30万3125ユーロ(当時レートで邦貨換算約4400万円)で落札された。
これは新車当時、英国に5台だけ輸入された206GTのうちの1台ではあるが、事故に巻き込まれてフロントエンドを破損し、オリジナルのアルミ製からスチール製に付け替えられている。さらに積まれるエンジンはノンマッチングで、内装もヤレていてドアパネルは外れた状態。元のオーナーがレストアに取りかかるも、プロジェクト半ばのまま倉庫で保管されていたそうだ。
つまりこの206GTはレストアベースと言っていい車両であり、ここから満足のいく状態に戻すまでにどれほどの手間暇とコストがかかることか……。であれば、ピカピカに仕上がったディーノはやはり、1億円の世界になるのも不思議ではない。
この個体が新オーナーのもとで美しく復活を遂げて、ふたたび衆目の前に現れてくれることを気長に待ちたい。