軽自動車クラスを超えた本格RV
“○○ミニ”というと、皆さんはどんなプロダクト、商品名を思い浮かべるだろうか? 筆者の場合、自身の年式がもう古いので、連想するとしたらカシオミニ(何それ? という人はググってみてください)、コニカビッグミニ、あるいは精いっぱい頑張ってもiPod miniといったところ。いずれにしても、元があって、そのコンセプトなりイメージなりを受け継いだ縮小版、コンパクト版といったニュアンスのネーミングということになる。
パジェロをそのままスケールダウンしたかのようなクルマ
先ごろ三菱から登場したデリカミニも、デリカの一員として名乗りを上げたクルマ。となると反射的に思い出すのがパジェロミニだ。
パジェロミニの登場は1994年12月のことだった。「軽からビッグクラスまで様々なRVを他社にさきがけてフルラインアップするとともに、新たなRVシーンを提案する」とは発表当時のニュースリリース中の文面。まさに「軽自動車本来の魅力を最大限に生かしながら、RVとしての本物感、機能美、遊び心を満載させ、あらゆる生活シーンで楽しめる軽自動車クラスを超えた本格RVとした」(同)のがパジェロミニだった。
ネタ元などと軽々しい言い方をするとお叱りを受けてしまうかもしれないが、いうまでもなく“原形”はパジェロだった。パジェロミニが登場した1994年というと、1991年に登場した2代目パジェロの人気が全盛期の頃。そこで車名ロゴの書体も踏襲していた(完全に同じではなく平体をかけ文字を若干だけ太く見せてていた)のをはじめ、パジェロをそのままスケールダウンしたかのようなクルマとして登場した。
女性のユーザーも意識していた
とくにスタイリングは、パジェロのショートボディのエッセンスを巧みに採り入れたもの。シンプルな横桟基調のフロントグリルと丸型ヘッドライト、ロールバー状のアクセントになったBピラーなど、全体のムードはパジェロそのものの雰囲気。小さいながらもブリスターフェンダーを備えた。
ただし、同時期のライバル車のジムニー(2代目・JA11〜12の頃)があくまでタフで素朴なクロカン風だったのに対し、パジェロミニは日常的なシティユースにも溶け込む洗練されたスタイルとした点が注目された。女性のユーザーも意識していた。
インテリアは、インパネにマルチメーター、助手席側のアシストグリップなどを備え、パジェロ譲りのデザインを採用。フルトリム化された乗用車感覚の快適な空間に仕上げられていたことも見逃せない。100mm径というスピード/タコメーターはクラス最大だった。
本格オフロード4WDらしいスペックを身につけていた
一方でメカニズムでは、カタログにも小さな図版が載せられているが、フレームとボディシェルを一体化させたビルトインフレームタイプのモノコック構造を採用。別体フレーム構造に対して30kgの軽量化と高剛性、ひいては高い操縦性、安全性も確保した。細かなところではドアの構造にも、振動、ホコリの進入、水圧などに配慮していた。
縦置きされる搭載エンジンは、660ccの4気筒DOHCの20バルブインタークーラーターボ、またはSOHC16バルブECIマルチとし、4WDシステムには、フロントデフをフリーホイールクラッチ付きとした、イージーセレクト4WDを採用。トランスミッションは5速MTと3速ATの設定。サスペンションはフロント=ストラット、リア=5リンク式。アプローチアングル44度、デパーチャーアングル47度を確保し、本格オフロード4WDらしいスペックを身につけていたこともパジェロ譲りだった。
また1996年1月には2WD車も追加設定。改めておけば、これはFR(後輪駆動)だ。
派生モデルやボディバリエーションも豊富にあった
そのほか派生モデル、バリエーションも豊富に登場した。1995年11月に登場したパジェロJr.(ジュニア)はその中の1台。このモデルはパジェロミニをベースに、660ccエンジンに代わりコンパクト設計の4気筒1.1LのSOHC16バルブエンジン(4A31型)を搭載。ちょうどジムニー シエラに対抗するモデルとして用意された。
外観では全幅を1545mmとし、パジェロミニのブリスターフェンダーに被せた形ではあったがワイドフェンダーとサイドガーニッシュを装着。ワイドトレッドと205/70R15 95Qのワイドタイヤの設定で、コンパクトだが安定感のあるスタンスとした魅力的なモデルだった。なおコチラのパジェロJr.は1998年6月に発売されたパジェロio(イオ)へと引き継がれ、5ドアも登場させるなどした。
パジェロミニで、2代目にバトンタッチする1998年までの間に登場した派生モデルの一例としてカタログ写真をご紹介しているのがスキッパーだ。スキッパーは往年のミニカのスペシャルティモデルの車名の再来だったが、パジェロミニではメッキグリルと特別色のモノトーンカラーに身を包み、UVカットガラスなども装着したカタログモデルとは一味違う特別仕様車として登場した。“遊び心”の言葉を地で行く、カジュアルだが三菱の4WDらしく本格的なスペックにも支えられた魅力に溢れたクルマだった。