車両ごとの性能差を均一化するためのレギュレーション
「走りで人を魅了する」のがドリフトの原点ではあるが、FDJはプロモータースポーツ。FIA(国際自動車連盟)公認レースと変わらぬ厳格なルール下で、運営されているのはFDも同じだ。
一例を挙げると、タイヤのレベルはシビアにコントロール(適正化)されている。FDJで使用するタイヤは、アメリカ本国での検査(完全にバラされ、比重、硬度、摩耗、抵抗値などまで確認)が実施され、FDが定めた基準をクリアする必要がある。抜き打ちテスト(これもアメリカに輸送され、承認タイヤと相違ないかをチェック)も頻繁に行われ、仮に申請したタイヤと異なっていた場合は、重大なペナルティが下される。タイヤの幅や直径も制限があり、日本の場合、幅が285サイズ、径は19インチまでとなっている。
ちなみにFDJ2とFDJ3のタイヤはそれぞれワンメイク(現在は横浜ゴムがサプライヤー、市販タイヤがベースだが、公道で使えない競技専用品)。これは、仮にクルマにパワー差があっても、タイヤのグリップ力以上の性能は引き出せない理由から、同条件のタイヤをどう使いこなすか、チームのマネージメント力を鍛える狙いがある。FDJは競技の運営だけでなく、日本のモータースポーツを育てることを念頭に置いた考えも持ち込まれている。
その他、エンジンや使用燃料については制限が設けられていない(1000㎰オーバーのマシンもざら)が、ボディについては市販のモノコックに限定。サスペンションの取り付け位置、ジオメトリーなどの変更は不可で、ロールケージもクラッシュ時にドライバーを保護するためのアンチイントリュージョンバーを含めた8点に制限されるなど、車両ごとの性能差を均一化するため、細かくレギュレーションが決められている。
審査基準を簡単に説明すると
また、速さやタイムで勝敗が決まるレ―スやラリーなどと異なり、芸術性、正確性、パフォーマンス性などがより重要視されるFDJはどのように勝敗が決まるかが、分かりにくい。そのため、一般的なモータースポーツのテクニカルレギュレーション(車両規則)、スポーティングレギュレーション(競技規則)の他に、ジャッジレギュレーション(審査規則)が明文化されているのも特徴だ。
競技は基本2日間で行われる。初日の予選は個人競技となる単走で32人までふるい落とされる。翌日の決勝はタンデム(追走)と呼ばれる1対1のトーナメント型式で互いの技を競い合い、勝者を決める。スタートからフィニッシュまでの決められたコース内にセクターと呼ばれる審査エリアが複数あり、そのエリアをどのようなライン、姿勢で通過したかを3人のジャッジが100点満点からの減点法で評価するのが基本。
予選での審査は「ライン」「角度」「スタイル」の3点で審査される。それぞれの審査基準は下記の通り。
・ライン(30ポイント):車両の後部で外側のゾーンやタッチアンドゴーエリアを通過する技術と、車両前方で内側のクリッピングポイントへ果敢なアプローチをする技術
・角度(30ポイント):ドライバーが、振り出しポイントから深い角度を維持しながら、コースを完走する能力
・スタイル(40ポイント):コース全体で車両をどのように操縦するかを審査。スタイルの審査は、「コミットメント」と「流動性」の2つに分かれている。コミットメントとは、コースに対して前向きに、積極的に、果敢にアプローチする姿勢を指し、流動性はどれだけ早く角度を付けたか、どれだけスムーズに角度を付けたか、またドライバーが望ましい角度を付けたかどうかという点と、コース上で車両の動きが安定していたかを審査する。
走行は予選、決勝ともに各2回。予選の単走はいかに正確な走りをしたかが審査され、得点の高かった走行を基準に順位が決まる。決勝の追走は2台同時で走り、リード(先行)はブリーフィングで提示された走行要件を満たす走りを目指し、チェイス(後追い)は後からリードの走りを模範しつつ、リード以上の走りを追求する。2回目は先行と後追いを入れ替えて走行し、どちらの走りが良かったかをジャッジ。勝敗が決まる。