曖昧さを排除した厳格な審査
「3人の審査員は総合的に見るのではなく、それぞれの審査ポイントの精度を高めるため、個別に見る完全分業制で、毎戦審査員がジャッジするポイントをシャッフルすることで、同じような結果(配点)にならないように工夫しています。また、競技前のブリーフィングではコースレイアウトはもちろん、満点の走り方、各セクターの点数(減点)について事細かに説明し、ドライバー/チームの理解(納得)を得た上で、競技に参加してもらえる体制を取っています」
そう語るのは、ドリフト界のレジェンドドライバーの1人で、現在はFDJの審査員&イベントディレクターを務める今村陽一氏。
ちなみに審査員は今村氏のような経験、知識ともに豊富な元ドライバーが抜擢され、ライブ配信用のカメラ、ドローンを駆使して、スモークなどで審査員が見えなかった場合などのフォローを含めて、結果にコミットする体制を整えている。
「最初は普段見られない、ダイナミックな走りに気分が高まると思いますが、30分も見ているとその感動も薄れてきます。ただ、ルールを覚えれば、知らなかったときは競技に対する見方も変わりますし、楽しみが何倍にも膨れるはずです。
われわれの理想は来場者いただくお客様の一人一人が審査員になってもらうこと。そのために今シーズンは審査方法などを説明するアニメーションを製作し、競技前に会場のモニターで紹介。FDJについてより理解を深めてもらうための試みも予定しています。多くの方にファンとなっていただくことが、プロモータースポーツとして認知される第一歩となるのは間違いありません」
と、オーガナイザーの岩田氏は語る。加えて、モータースポーツは危険と隣り合わせのイベントで、何があっても自己責任であることが前提ではあることはFDJも他の競技も変わらない。ただ、無責任に開催するのではなく、来場者全員に対して傷害保険に加入するなど、最低限の保証はFDJが担保する。選手と来場者の距離を近づけるために行っているオープンパドックも、安全に対する考えをエントラントと共有し、責任を分担。安心安全に競技を楽しんでもらえる環境作りを整えている。これもFDJの取り組みのひとつだ。
2023年シーズンの見どころは?
最後に今シーズンの見どころについて今村氏に話を伺った。
「FDのトップドライバーの一人であるマッド・マイク選手のフル参戦がトピックでしょう。シーズン後半からはマツダ3に4ローターエンジンを搭載した新型マシンが投入される予定で、こちらも注目です。また、新型のレクサスIS500パフォーマンスをベースとした車両が、4~5台参戦することも決まっています。レクサスからのバックアップを得て、マシンメイクや体制を強化。さらにFDとFDJにダブルエントリーするケン・グシ選手のドライブも決定しており、初年度からどこまで上位に食い込めるか、期待ですね。日本人では2022年、13歳でFDJにステップアップし、第5戦の岡山国際サーキットで並み居るベテランドライバーを抑え、単走で1位を獲得。非凡な才能を見せた箕輪大也選手は覚えていてほしいドライバーの一人です」
箕輪選手以外にも下位カテゴリーであるFDJ2にも自動車免許を持たない10代の有望ドライバーの力が少しずつ芽生えている。また、FDJ2からステップアップしてきたドライバーやチームがFDJでどこまで通用するか、そうした部分も楽しみのひとつだ。
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今回のインタビューを通じて、FDJはこれまでドリフトに抱いていた“カッコよさを競う興業”というイメージとは異なり、しっかりとマネージメントされたプロスポーツであることが理解できた。個人的にもルールや規則を学んだことで「足を運び、その世界に触れてみたい」と興味が惹かれたのは素直な感想だ。FDJの第1戦は2023年4月22、23日の鈴鹿ツインサーキット。ドライバーアスリートが正確な技術と芸術性を競い合う白熱の舞台はまもなく開幕する。
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