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【92台のみ生産】TRDが手掛けた「MRスパイダー」とは? オープン版「MR2」はMTが307万円/ATが316万3000円だった

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: AMW編集部

幌はシートの背もたれとリアのバルクヘッドの間に収納

春になり、陽気がよくなると、クルマ好きとしてはオープンカーで出かけたくなってくる。日本は四季もあれば雨も多いのに、じつはオープンカー大国で、意外に車種が多い。そんな中、ひときわ異彩を放っていたのが、今回紹介するトヨタのMRスパイダーだ。

オープンカーの本質を見抜いていたトヨタとTRD

MRスパイダーは、トヨタの特装車事業を手がけるとともに、競技車用の車体、エンジンを担ってきたトヨタのいわゆるワークスチーム「TRD」が製造・販売したオープンカーだ。ベースは2代目MR2(SW20)で、NAのGグレードをベースに、専用のオープンフード、着脱式のソフトトップが与えられたフルオープンモデルだった。

このMRスパイダー、TRDが作ったということもトピックだったが、それ以上に特筆できるのは、SW20にはもともと全グレードにTバールーフ車の設定があったところ。普通に考えれば、Tバールーフ車があればオープンカーなんていらない、となるだろうが、オープンフリークから言わせると、Tバールーフやタルガトップ、スライディングトップなどはオープンカーではない。フルオープンだけがオープンカーを名乗れる存在なので、それをトヨタとTRDはわかっていたというわけだ。

ボディ取り付け部の剛性もアップされていた

MRスパイダーの発表は1996年の2月。前年の1995年1月にMR2の誕生10周年記念特別仕様車が発売。SW20のIV型が登場するのが1996年6月だから、MRスパイダーはIII型の派生モデルとなる。

もっとも特徴的なのは、幌の収納スペース。MRスパイダーの幌は、シートの背もたれとリアのバルクヘッドの間に収納する特殊なモノ。リアスクリーンはアクリル製で、幌を固定するストライカーは、ホンダ「ビート」用の部品を流用したといわれている。

TRD製といえどもエンジンや足まわりは基本的にノーマルだった。III型のNAエンジン(3S-GE)は吸排気系と動弁系を改良。カムシャフトはMTとATで異なるプロフィールになっており、MTは高回転仕(180ps)、ATは常用回転域のドライバビリティ・レスポンスを優先(170ps)した。

煮詰めが甘いと酷評された足まわりも、III型でサスペンションジオメトリーを刷新。ボディ取り付け部の剛性もアップされ、フロントアッパーサポートにインターリング、リアにはサスタワープレートを入れるなど、重要部分に改良が加えられていた。またターボ車に限られていたが、ABSもこのIII型から、新開発のスポーツABSがオプションで設定されている。

リアウイングのないスッキリしたテールがオープンカーの色気を出している

MRスパイダーはこうした進化に加え、TRD製の前後タワーバーやマフラー、アルミホイールなどのオプションも選べ、ボディカラーも特別色のシルバーメタリックを用意。なお、インテリアでは、専用の本革ステアリングやシートファブリックなど装備していた。価格はMT車が307万円。AT車が316万3000円だった。生産台数は試作の3台を合わせて、92台と言われている(IV型、V型も数台ある)。

エンジンフードの造形などはわりとエレガントで、リアウイングのないスッキリしたテールがオープンカーの色気を出すのに一役買っている。稀少車なので、中古車市場でも滅多に見かけることはないが、幌を開けっぱなしで走ることを前提にした、本当の意味でのスパイダーとして、価値ある一台だったといえるだろう。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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